猛牛のささやきBACK NUMBER
「育成では行かないと書いていたので…」2年前のドラフトで悩んだ大卒投手がリーグ連覇に貢献するまで「オリックスに来たのは正解だった」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/12 11:01
7月に支配下登録を勝ち取り、オリックス救援陣の新たな柱としてリーグ連覇に貢献した宇田川優希(2020年育成ドラフト3位)
支配下選手のドラフトが終わるとすぐ、牧田は仙台大の森本監督に、「育成ドラフトで指名させてもらうかもしれません」と一報を入れた。
「交渉権を獲得して、本人がどういう思いなのか、話をしたかったというのもありました。あとはこちらの行動で、本人がどう決めるか。社会人に行くなら行くでしょうがないと思っていました」
育成ドラフト3位で指名された宇田川は、「正直、ホッとした」と振り返る。
「(4年)秋の結果を見たら、六大(東京六大学野球)のピッチャーとかはすごい成績を出していたので、自分は不安な思いでドラフトを迎えていました。支配下の指名が終わった時に、『やっぱりな』という気持ちもあった。そのあと育成で指名された時は、『まだプロの世界に入れるんだ』とちょっとホッとした気持ちがありました。でも、育成では行かないと調査書に書いていたので……」
どうすればいいのか困惑した。ドラフト当日の記者会見では何も言えなかった。社会人野球に行くしかないのだと思っていた。
プロ入りを後押しした同級生「俺は一択だから」
そのあと、仙台大の同級生・佐野如一に誘われて食事に行った。佐野も同じく、育成では入団しない意向を示していたが、オリックスに育成ドラフト5位で指名されていた。
「佐野に『どうする?』と聞かれた時に、僕は答えられなくて。あまり考えたくないというか、逃げていた部分もありました。でも佐野は、『俺は(プロ)一択だから』と言っていた。すごく前向きで、『また一緒に、同じチームで野球をやりたい』と言ってくれました。そこから自分も考えて、やっぱりプロに行きたいな、一緒に頑張りたいなと思ったんです」
育成契約で1年前にオリックス入りしていた仙台大の先輩・佐藤優悟(現・福島レッドホープス)からも連絡をもらい、設備が整っている、寮の食事が美味しい、部屋もきれいで1人部屋だから野球に集中できるといった話を聞いて、心を動かされた。宇田川は、育成でのプロ入りを決断した。