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大谷翔平にとってW規定到達は「どちらもいける範囲内の数字という認識」だった…過密日程、ウィルス性胃腸炎も乗り越えた今季の鉄人ぶりを振り返る
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byAFLO
posted2022/10/07 20:00
今季最終戦で既に達していた規定打席だけでなく、規定投球回数にも到達した大谷。日本でも成し遂げていない偉業だが、本人が語ったのは…
開幕延期により、例年以上の過密日程だった
日米通じて初めて規定打席に到達し、MVPを獲得した昨季を経て、万全の状態で臨んだ今季。開幕投手を任され、28試合に先発し、メジャー5年目で初めて、今季のエンゼルスでは唯一「162イニング」の高いハードルも超えた。
「安定して出られれば、どちらもいける範囲内の数字だというのは認識してましたけど、それでも無理して狙いに行くところではないかな、というのが率直なところ。自分の体調を無理して崩していくところではないかなと思います」
無論、すべてがスムーズに進んだわけではない。昨オフ、オーナー側と選手会との労使協定交渉が泥沼化し、春季キャンプ、公式戦開幕が延期された。その結果、ダブルヘッダーや長期連戦の強行日程が増え、長距離の移動負担も、例年以上となった。つまり、体調管理にはこれまで以上に細心のケアが必要だった。
「ウィルス性胃腸炎」でもマウンドに上がった
予期せぬアクシデントにも見舞われた。5月1日のホワイトソックス戦では、試合途中に股関節の張りを訴え、9回には代打を送られて交代した。翌日以降も出場を続けたものの、全力疾走はできなかった。それでも、DHとしてナイターにフル出場した延長戦の翌日5日、デーゲームのレッドソックス戦には予定通りに先発し、7回無失点と好投。症状悪化や長期離脱を懸念する周囲の声を、文句なしの結果で黙らせた。
8月21日のタイガース戦では、4回3失点で降板。試合後には「ウィルス性胃腸炎」と発表された。登板前から体調の異変を自覚しながらも、他の投手への負担を考慮して、無理を承知でマウンドへ向かった。翌日はスタメンから外れたものの、代打で途中出場。少々のアクシデントを平然と乗り越える「鉄人」ぶりを維持しつつ、打者、投手の両部門で「規定」までの数字をコツコツと積み上げてきた。
米移籍当時、「二刀流」に懐疑的だった声は、もはや聞こえてこない。世論を二分するアーロン・ジャッジ(ヤンキース)とのMVP争いにしても、大谷の活躍が特殊で歴史的だからにほかならない。
大谷にとってダブル規定到達は、あくまでも「範囲内の数字」。
世間一般のものさしで計れない大谷は、来季以降、どんな常識を覆すのだろうか。
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