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「大きな転機となったドラフトだった」“弱小球団”が競合覚悟で1位指名…田中将大18歳に苫小牧で伝えた「一緒に歴史を作ろう」
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byBUNGEI SHUNJU
posted2022/10/20 11:06
楽天に1位指名を受け、駒大苫小牧ナインに担がれる田中将大(2006年)
「田中君と球団の歴史を作っていきたい」
田中が11勝を挙げて新人王に輝いた07年、楽天は初めて最下位を脱出し4位に入る。田中が15勝を挙げた09年は2位に躍進した。
「ドラフトの後、苫小牧で初めて会ったとき、『田中君と一緒に球団の歴史を作っていきたい』と伝えたら、彼は『やりがいがあります』と答えてくれました。入団後は『楽天に入ったからダメになったんだ』などと言われないよう、この“球界の宝”をしっかり育成しようと強く意識しました。ベテラン中心の編成でしたから、若いスターの加入で選手たちが刺激を受けたことは間違いないでしょうね。
初めて先発した07年3月のソフトバンク戦で田中は2回もたずに6失点と打ち込まれたんですが、野村克也監督(当時)はファームに落とさなかった。すると2度目の登板からぐっとよくなって勢いづいたんです。田中が1年目から活躍できたのは、やはり野村さんの手腕もあったと思います。その後も結果を出していくことで、田中が勝てないとチームが乗っていかない、彼が投げるゲームは落とせないという空気が出来上がっていきました」
今シーズンは2回の故障で11勝にとどまり、チームも最下位に。来季は岩隈がポスティングでチームを離れ、監督も交代する。田中にかかる期待はますます大きくなる。
「これからは、若手の筆頭という立場から、チーム全体を引っ張っていく選手になってほしい。成績とリーダーシップの両面でね。彼は、そうした才能がある選手ですから」
●初出:2010年10月14日発売・Number764号「その時、球史が動いた」より
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