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松坂大輔という“超目玉”を逃した横浜スカウトの悔し涙「ものすごく不吉な予感に襲われたんです…」ドラフト抽選前に何があった?

posted2022/10/20 11:05

 
松坂大輔という“超目玉”を逃した横浜スカウトの悔し涙「ものすごく不吉な予感に襲われたんです…」ドラフト抽選前に何があった?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

西武に交渉権が決まった瞬間、口元をゆがめて苦笑する横浜高・松坂大輔(1998年)

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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名選手たちの“運命の日”には、さまざまなドラマがある。今稿ではNumber764号(2010年10月14日発売)より、ドラフト秘話をまとめた『その時、球史が動いた』を無料公開します。全4回の3回目は松坂大輔のストーリーです(#1小池秀郎編、#2福留孝介編、#4田中将大編へつづく)。

 横浜以外なら社会人へ行く――。1998年ドラフトの超目玉・松坂大輔と“相思相愛”でありながら、横浜は3球団による抽選の結果、大魚を獲り逃した。当時、担当スカウトだった稲川誠は、「あれほど悔しかったドラフトはなかった」と振り返る。

「ドラフトの前の晩、女房と庭に出たら、獅子座流星群が見えたんです。お願いごとをしようと思って、『松坂』の『ま』を言ったら消えちゃったけど(笑)、僕も獅子座だから縁起がいい。それで朝起きて、星占いを見たら、僕の星座も、クジを引く権藤博監督の射手座も、運勢がすごくよかった。『いいな、いいな』と思って会場に出かけたんです」

 だが、その「幸運の予感」は、最初にクジを引いた日本ハム・上田利治監督が抽選箱から手を抜いた瞬間、暗転してしまったという。

「僕は控え室のモニターでジーッと見ていたんですが、上田監督がクジの入っている封筒を、なぜか3枚全部持ち上げましてね。そのとき、ハッと、ものすごく不吉な予感に襲われたんです」

「ショックで、涙がポロポロ出ちゃってさ」

 悪い予感は的中する。上田は外したが、2番目の西武・東尾修監督が「当たり」を引き、権藤には外れクジしか残っていなかった。

「ショックで、涙がポロポロ出ちゃってさ。彼に懸けて、ずっと一生懸命頑張ってきていたし、とにかくすごく残念だった。その年、横浜は日本一になったでしょう。彼を獲れれば、次の年も恐らく優勝できるという思いがありました。それが一番悔しかったね。

 僕は大洋が昭和35年に初優勝した2年後に入団したんですが、当時は日本一に浮かれて、補強がなっていませんでした。その状況を知っていたから、大堀球団社長にも『来年が大事ですから』と言っていたんです。それだけに、悔しくて、何日か落ち込みました」

【次ページ】 松坂に惚れたスカウト「熱心に通いましたよ」

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