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スターダム屈指の肉体派レスラー・飯田沙耶25歳の運命を変えた“推しと筋肉”「もう、制御しなくていいんだ」《特別グラビア》
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/09/30 17:01
スターダムきっての肉体派レスラーとして活躍する飯田沙耶。身長145センチと小柄だが、持ち前のパワーと強烈な闘志で存在感を示している
「あれがターニングポイントでした。一か八かのドラミング。もう、制御しなくていいんだ。ユニットを意識しすぎず、自分は自分でやっていこう。そう開き直って、今につながっています」
フューチャー・オブ・スターダム王座への道のりは長かった。最初の挑戦では林下詩美を相手に玉砕。舞華、上谷沙弥を含めた王座決定巴戦では舞華に敗れた。迎えた2020年12月20日のタイトルマッチは3WAY方式。舞華、上谷と戦って上谷をフォールした。
「もうやめたいとか、落ち込んでいた時期の戴冠でした。その過程では『上谷は後輩なのに』とかいう声も聞こえてきた。『うっせえよ』と思いましたね(笑)。続けてよかった。あきらめずに、練習をしてきてよかった」
飯田は当時を思い出すようにうなずいた。
約1年間の長期欠場「私の居場所はあるのかな…」
その後3度の王座防衛に成功した飯田を、思いがけないアクシデントが襲う。2021年4月4日の横浜武道館大会。5対5のイリミネーションマッチで着地に失敗し、歩けなくなってしまった。
「試合を続けようとしたけれど、ダメでした」
飯田は右膝の前十字靭帯と外側側副靭帯の断裂で約1年間リングを離れることになった。
「治った時に、私の居場所はあるのかな。そもそも、スターダムのリングに戻れるという次元の怪我なのかな。そんなことを考えました。1年という期間は長かった。正直、怖かったです」
スターダムの目まぐるしい流れの速さが不安だった。だが、欠場中のサイン会で「飯田さんの試合は見たことないけれど、これから応援します」というファンの言葉が飯田を勇気づけた。そして「ファンも変わっているんだ」ということを実感した。
「退院して1カ月は家にいたけれど、やっぱり不安しかないので、ジムに行って体を動かし始めた。上半身からやって、膝が安定してから道場に行こう、と。余計なことを考えるのはやめようと決めたんです」
約1年ぶりのリングは、2022年3月11日の品川大会。医師には「少し早いんじゃないか」と言われたという。
「でも気持ち次第、いざという時は羽南さんが助けてくれる。1年間溜まったものを出さないと。入場の瞬間、むちゃくちゃ気合が入りました。『やっぱり、ここだ。居場所作るぞ!』って」