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スターダム屈指の肉体派レスラー・飯田沙耶25歳の運命を変えた“推しと筋肉”「もう、制御しなくていいんだ」《特別グラビア》
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/09/30 17:01
スターダムきっての肉体派レスラーとして活躍する飯田沙耶。身長145センチと小柄だが、持ち前のパワーと強烈な闘志で存在感を示している
「家計も考えて県立しか受けなかったので、落ちたら最後、みたいな感じで。高校を卒業したら就職と決めていたので、部活はやめました。コースは建築とかデザイン、インテリア系。『図面描いてこい』とかキツい課題が多すぎて毎回徹夜でしたけど、まじめにやっていました。私がいたインテリア系の学科はほぼ女子だけでしたね」
就職活動を経て、工務店に勤めることが決まった。しかし「1年働いて、自分に合わない」と感じて退職する。
「フリーターになって、高校の時アルバイトしていたスーパーのレジに戻りました。レジ打ち、早いですよ」
その後、徐々にプロレスの世界に惹かれていった飯田。履歴書を送るまで躊躇もあって時間がかかったが、友人の後押しもあり、ついにスターダムの門を叩いた。
「たぶんロッシー小川さん的には不合格だったのかもしれませんが、レフェリーをやっている村山大値さんに救われました。『自主練習してから来いよ』って」
飯田が2カ月後に道場に行ったところ、たまたま練習前だったのでリング上に選手が全員そろっていた。
「最初の挨拶はド緊張のカミカミ(笑)。練習用の着替えも持って行ったんですけど、その日は挨拶したら帰されました」
転機となった助言「飯田、もっと筋肉鍛えてみれば」
練習生になって4カ月が経ち、飯田は全体練習に参加できるようになった。2018年12月にプロテストに合格、2019年1月14日に後楽園ホールでデビューした。相手の刀羅ナツコに押しつぶされて負けた。
「ガチガチでした。入場からリングに上がるまで緊張しっぱなし。コールされて、泣きそうで、もう試合どころじゃなかった。頭真っ白のまま、何もできなかった……」
飯田は「不器用なのでギューンとは行けずに、ちょっとずつちょっとずつ」成長していった。
「ナツコさんの当時のユニットはJANでしたが、すぐに『入りたいです』と伝えました。私にはJANが合っていると思ったんです。ジャングル叫女さんがリーダーで『自分のレスラー像を出せ』と言われましたが、新人という言葉に甘えながらやっていた」
JANがなくなりSTARSに入ってからは、自身のキャラクターを模索していた。
「最初は、STARSにいる自分が正直嫌でした。みんなビジュアルが良いし、変なCDデビューもしましたけど『馴染めない、これは私じゃない』って感覚というか……」
そんなある時、「飯田、もっと筋肉鍛えてみれば」とアドバイスを受けたという。