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ネイマールやブラジル人が激怒+エール「ドリブルし続けろ、踊り続けろ!」 ビニシウスを襲った“人種差別”…過去にはロベカルやフッキらも
posted2022/09/28 17:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Daisuke Nakashima
どの国民、どの民族にもアイデンティティがある。
「これが我々の最大の誇りであり、最も大切にしているものなのだ」という認識である。
ブラジル人にとってのアイデンティティは、フットボールとダンスだろう。ブラジル選手の多くはゴールを決めると体をくねらせて踊る。
日本人選手で点を取って踊る選手は少ないが、その1人にカズ(三浦知良)がいる。それは彼が15歳から23歳までブラジルでフットボールの修行をして、かの地ではフットボールとダンスが密接な関係にあることを知っているからだ。
「ブラジルのサンバ会場に行け」のみならず…
今月、この2つのアイデンティティを同時に傷つけられる出来事があり、ブラジル人が激怒した。
ブラジル代表の次期エースと目され、昨季、レアル・マドリーで大ブレイクし、今季序盤も好調のビニシウスに対して人種差別的な発言が向けられたのである。
15日、スペインのテレビのスポーツ番組で出席者の一人である代理人(スペイン代理人協会会長)が「ビニシウスは、対戦相手にもっと経緯を払うべきだ。踊りたければ、ブラジルのサンバ会場へ行け」と言い捨てた。のみならず、「サルのような真似はよせ」と放言した。
22歳にして“白い巨人”で主力を担うビニシウスは、今季、すでに5得点を決め、その度に実に楽しそうに踊る。その姿にケチをつけたのだ。
この発言はスペインとブラジルで拡散され、大きな物議を醸した。
レアル・マドリーは、クラブのHPで「いかなる人種差別行為も容認しない」として、「我々全員でビニシウスを励まし、サポートしよう」とサポーターに呼びかけた。
「ドリブルし続けろ!踊り続けろ!」
ビニシウス本人は、自身のSNSで以下のようにコメントした(抜粋)。
《他人が幸せそうにしているのを見て不快に思う人がいるんだ。とりわけ、僕のようなブラジル生まれの黒人に対してね。欧州には、外国人を嫌い、人種差別をする人がいる。でも、これは昨日今日始まったことじゃない。これからも、僕はドリブルをすることもゴールの後に踊ることもやめないよ。》
ブラジル代表のチームメイトで個人的にも親しいネイマール(パリ・サンジェルマン)は、「ビニ、ドリブルし続けろ!踊り続けろ!」、「次に(代表で)ゴールを決めたら、一緒に踊ろうぜ」と激励した。同僚であるMFルーカス・パケタ(ウエストハム)は、ブラジル代表の試合でビニシウス、ネイマールと一緒に踊っている写真をSNSに投稿した。