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ネイマールやブラジル人が激怒+エール「ドリブルし続けろ、踊り続けろ!」 ビニシウスを襲った“人種差別”…過去にはロベカルやフッキらも
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/09/28 17:01
レアル・マドリーで急成長し、W杯でも活躍が期待されるビニシウス・ジュニオール。彼が“人種差別問題”に襲われている
他の多くのブラジル人選手、そしてビニシウスの出身クラブであるフラメンゴも彼を全面的にサポートするコメントを発表した。
地球上に、人種差別や外国人を嫌う感情が全くない国は存在しない。しかし、一般的に濃淡はある。
北米、欧州の一部ではかなり濃いし、日本を含む東アジアも薄くはない。中南米は比較的薄く、とりわけブラジルは薄い部類に入るだろう。
ブラジルでは人種差別的な言動は違法であり、そのことが社会全体で認識されている。人種差別が全くないとは言えないが、他国より少ないのは確かだ。外国人差別もほとんどない。それだけに、ブラジル人が外国で人種差別的な扱いを受けた際のショックは大きい。
マドリードダービーでは敵地サポーターから…
この問題には、余波があった。
18日、ラ・リーガ第6節でアトレティコ対レアルのマドリード・ダービーが組まれていた。試合前、アトレティコの主将でスペイン代表のMFコケは、「もしビニシウスが点を取って踊るようなら、タダでは済まないだろう」という脅しとも受け取れる発言を行なった。
ブラジルではこの発言も大きく報じられ、18日の試合が普段にも増して注目された。「踊れビニ」というハッシュタグが立ち上げられ、ブラジルのテレビ局はリオの有名サンバチームの本部から中継して音楽とダンスで彼を励ました。
一方、試合前、スタジアム内外でアトレティコのサポーターが「ビニシウスはサルだ」と連呼。試合が始まると、彼がボールに触る度にブーイングを浴びせた。
レアルはエースストライカーのカリム・ベンゼマを故障で欠き、本来は右ウイングのブラジル代表ロドリゴが代役を務めた。前半18分、このロドリゴが後方からの浮き球をダイレクトで鮮やかに蹴り込んでレアルが先制。彼は普段は点を取っても滅多に踊らないのだが、この日はあえて踊り、そこへビニシウスがやってきて一緒にステップを踏んだ。
もしこの一戦でビニシウスがゴールを決めていたら
ビニシウスは非常に厳しいマークを受けたが、それでもチームに貢献した。
前半36分、MFルカ・モドリッチとのワンツーパスで左サイドを突破すると、右足でシュート。これがゴールポストに当たって跳ね返ったところをMFフェデリコ・バルベルデが蹴り込んでレアルが追加点をあげた。
これが決勝点となり、レアルは敵地でのダービーを2−1で制した。