- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
《延長17回秘話》PL学園4番が悔やむ横浜・松坂大輔を仕留め損ねた1球「唯一ホームランにできたボールだった…」「今でも夢に出てきます」
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/04 11:03
センバツ準決勝では松坂から先制タイムリーを放ったPLの4番・古畑和彦。しかしバッターボックスでは松坂のボールに恐れを感じていた
3年生となり、その松坂大輔率いる横浜と、1998年センバツの準決勝で対戦することになる。それまで映像は見ていたが、実際に目の前で投げ込む松坂の迫力は別格だった。
「ブルペンでピッチングしているボールを見た時に『今までの歴代ナンバーワンやな』って確信しました。1試合目だったんで、お客さんいないじゃないですか。音がね、パーンって響き渡るんですよ。それが凄くて『うわ、これが松坂か…』っていう感じで試合に入っていった感じです」
初対決は2回に訪れた。直球には対応できたが、スライダーで三振を喫した時にその凄さを体感した。
これはプロや。これが高速スライダーなんやな
「スライダーの曲がりと速さと切れを見た時に『これはプロや。これが高速スライダーなんやな』って驚きました。これを打つのは厳しいと思いました」
それ以降、元々直球には自信があった古畑は狙い球を直球に絞ることになる。4回の2打席目はレフトフライに倒れるが、0-0で迎えた6回2死満塁、初球の直球をフルスイング。三塁線を破る先制の2点タイムリーを放った。
しかし、守備で痛恨のミスを犯す。8回1死二、三塁、松坂が放ったゴロが三塁線へと飛んできた。なんなく捕球も、本塁への送球が三塁走者・加藤重之の左肩を直撃。2人が生還し、同点とされた。9回にはスクイズで勝ち越され、2-3と逆転負けを喫することになる。
あの送球ミスから繰り返した「ある練習」
この敗戦の瞬間から、夏の目標は「打倒松坂、打倒横浜」になった。チームとして「松坂のスピードボールに負けないスイングを身につける」ことを徹底した。とりわけ、古畑は「初球からストライクのコースにくるストレートを全部打ちにいって、それを本塁打にする」ことをイメージし、今でいう「ボールの軌道にスイングの軌道を入れる」練習を何度も繰り返した。