それともう一点、自分の送球ミスが敗戦へとつながった反省から、課題を持って練習を重ねた。あの日、三塁走者の加藤は、一塁寄りにミットを構えた石橋勇一郎の方に向かって走路を変えてきた。ならばそれに当たらないように、更に一塁側に構えたところに投げる練習を積み重ねた。もう二度とないかもしれないプレーに多くの時間を割き、不安を払拭していった。

センバツでまさかの悪送球、このプレーを課題とし、練習に励んだ　©KYODO

　そして南大阪代表として出場した夏の甲子園。佐賀学園との3回戦を前に行われた抽選会で、勝てば翌日の準々決勝、第1試合で横浜と再戦することが決まった。

PLが打倒松坂のために行った特別な練習

　また横浜と試合ができる――。

　古畑は高揚感を抑えつつ、佐賀学園との試合では待望の甲子園初本塁打を放ち5－1での勝利に貢献、ようやく実現したリベンジの舞台にも、古畑に笑顔はなかった。試合後に田中一徳と投手陣以外のスタメンで向かった先は、PL学園の室内練習場。そこには、翌年にエースとなる植山幸亮が、極端に前へ置かれたL字ネットの後ろで準備万端をアピールするかのように、右肩をグルグルと回していた。

「清水孝悦コーチの指示のもと、植山は18.44メートルから10メートルの距離まで前に出て投げていたので、それは速かったです。投げた瞬間に振りにいくみたいな感じでした。あの試合に入った時、松坂は調子が悪くて、中盤から後半にかけて球威を取り戻していくんですけど、最初はボールがきていなかった。だから、植山を近くにやって投げたこの練習はしっかり生きたと思います。（2回の）松丸文政のセンターオーバーの甲子園初ヒットは、清水コーチのノーステップで打つアドバイスから、あのスピードに力負けしないスイングを前日に身につけたからです」

佐賀学園戦では本塁打を放った古畑　写真は本人提供

　その言葉通り、PLは松坂の序盤を攻め、4回までに4点を奪った。ただ、横浜バッテリーが、センバツで打たれたPLの4番に対して対策を練っていないはずがない。アッパースイングで本塁打を狙う古畑を封じるため、徹底してインハイを攻めてきた。

「僕もある程度インハイというのは頭にあって、それを狙っていました。『これを打ったら松坂を倒せる』という気持ちもあったので。でも、それが術中にはまっているところもありましたね」

古畑の夢にまで出た、痛惜の打席

　全8打席、3回のストレートの四球を除く7打席中、実に6打席で、直球でとりにきたファーストストライクを強振した。中でも「夢に出た事がある」という打席がある。4回裏2死一、二塁。4―2とリードして迎えた第3打席だ。2ボールからの3球目。外角やや真ん中よりの直球に食いついた。

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