こんな言葉もあった。

「途中で真剣になったか？ なんのためにそうなる必要があるんだ」

　メイウェザーの行動や言葉は「ナメている」と思われても仕方がないものだ。彼が会場入りしたのは大会が始まってから。全4試合しかないのに、だ。セミファイナルが終わっても、まだバンデージを巻いていた。RIZINの榊原信行CEOはKO決着が続いて、メイウェザーに伝えていた試合開始時刻の目安よりも早まったためだと説明したが、そもそも真面目にやるつもりなら会場入りからして遅すぎる。起床したのがゴングの3時間ほど前だというから呆れるしかない。

朝倉の闘いぶりに、メイウェザーは笑顔を見せる場面もあった　©Takuya Sugiyama

見えてきた“メイウェザーの信念”

　だが、メイウェザーは単に「ナメていた」ということではないのかもしれない。朝倉戦はエキシビションでありエンターテインメント。真剣にやる必要のないものだった。なぜなら“本物のボクシングではない”からだ。彼は現役時代に行なってきたボクシングの試合と現在のエキシビションを、まったく違うものだと捉えている。大会前日の会見では、朝倉がYouTuberとしても人気であることからこんな言葉を残した。

「俺はYouTubeで有名になったわけじゃない。一つのこと（ボクシング）にずっと心血を注いできたんだ。1987年から、このスポーツに身を捧げてきた。誰も俺からボクシングを奪えない」

　エキシビション後には、現役時代のキャッチフレーズに言及した。

「俺はもう“プリティ・ボーイ”でも“マネー”でもない。そう呼ばれていた頃のような動きはできないんだ。それでも観客はフロイド・メイウェザーを体感してくれたと思う」

メイウェザーは試合後、朝倉の右手を高々と掲げて健闘を称えた　©RIZIN FF

メイウェザー「世界の人々を楽しませたいんだ」

　前日会見と当日の会場にはメイウェザーと対戦したこともあるマニー・パッキャオも登場した。ボクシング史上最大級の話題を呼んだ両者の対戦はメイウェザーの判定勝利。会見ではレジェンド同士の2ショットも実現している。もしかしたら、RIZINはエキシビションでの「メイウェザーvs.パッキャオ2」を狙っているのか。

　その可能性を聞かれたメイウェザーは、はっきりと否定した。

「今の自分は要求したことがすべて通る立場にある。そうなるために犠牲を払い、勝ち続けてきたんだ。自分ですべてコントロールできるんだから、チャンピオンとか元チャンピオンとエキシビションをやるつもりはないね。俺はやりたいことだけやって、世界の人々を楽しませたいんだ。なぜリスクを負ってまで厳しい闘いをしなきゃいけないんだ。体に余計なダメージを負うようなことはしないよ。俺がYouTuberやMMAガイとやるのを見ろと強制はしない。でも俺が何かするなら何百万ドル、何千万ドル払うという人がいる。楽に稼げる選択肢があるなら、俺はそっちをやるよ」

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