濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「お前タフだな、気に入ったよ」朝倉未来の覚悟に、メイウェザーが感じた“誇らしさ”…KO決着直後、リングで2人が交わした言葉
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/09/26 11:07
9月25日、超RIZINのメインとなるエキシビションにて対戦したフロイド・メイウェザーと朝倉未来
「一発もらったからどうこうって話じゃないよ。俺は世界のトップボクサーたちのパンチを受けてきてるんだ」
メイウェザーは“ディフェンスマスター”とも呼ばれ、相手のパンチをクリーンヒットさせないことに関しては他の追随を許さない。だから対戦相手や見る側は「一発当てさえすれば」と考える。しかし本人は、攻撃を受けることまで織り込み済みなのだ。ボクシングとはそういうスポーツなのだということだろう。
ついにダウン…「2ラウンド3分15秒」の決着
朝倉とのエキシビションは、メイウェザーが被弾した2ラウンドで終わった。メイウェザーは淡々と、しかし確実に自分のパンチも当てていく。ラウンド終了直前に左フック、ゴングとほぼ同時に右ストレート。朝倉はダウン。「地面が歪んだ」という朝倉を見てレフェリーはダウンカウントを数え、そして試合を止めた。
主催者が発表したタイムは「2ラウンド3分15秒」。ゴングと同時のパンチで倒れてテンカウントなら3分10秒となるはずで、厳密に言うなら「2ラウンド終了時、TKO」だろう。レフェリーがカウントを始めたのは、朝倉が倒れて少したってから。2ラウンドが終了したのち、レフェリーが続行不能と判断したという形だ。ただ発表されたタイムがどうであれ、これはエキシビション。公式レコードには勝ち負けが残らない。正式な競技ではないと言ってもいい。
メイウェザーは常にエキシビションを「エンターテイメント」だと言ってきた。来日してからの行動もファイターのそれではない。大会1週間前に来日するとすぐにパーティーへ。高級ブランド店で“爆買い”を繰り返しもした。公開練習のオファーにOKを出したまではよかったが、1時間以上も遅刻している。真剣な闘いという前提なのに、契約体重もなかった。
「途中で真剣になったか? なんのためにそうなる必要がある」
エキシビションを見て、放送席の高田延彦RIZINキャプテンは「朝倉未来がメイウェザーを本気にさせた」と感想を語った。そう感じた者は多いはずだ。朝倉のパンチでメイウェザーが気合いを入れ直したのだと。筆者もそういう部分があったのではないかと思う。
だがメイウェザーによると、2ラウンド終盤のパンチもフィニッシュを狙ったわけではないという。「強く打ったつもりはなかったんだけどね。ダメージの積み重ね(でのダウン)だと思う。何が起こるか分からないのがコンバットスポーツだよ」