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「昔はハリルさんに怒られたけど」「ドイツ語力も…」30代となった原口元気に「心の余裕ができた」2つの決定的理由
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBoris Streubel/Getty Images
posted2022/09/27 11:09
ウニオン・ベルリンで戦術眼を磨いた原口元気。プレースタイルの変貌について、彼に聞いてみた
ドイツの首都が退屈な街であるはずがない。むしろ、アーティストなどを中心に、世界中から熱狂的な支持を受ける街でもある。
「街に出てみると、良い店があるし、かわいいカフェもあるし、うちの犬を連れていけるお店もある。『ベルリンって楽しいなぁ』と思うようになったりして。良い意味で力が抜けているかな。でも、だからといって、だらしない生活をしているというわけではない」
自分で言うのもなんだけど、ものすごい変化だよね!
ベルリンのクロイツベルクという地区で、古着の店をプラッと訪れたり、美味しいレストランを探してみたり。ベルリン観光とあわせて、試合観戦にくる友人や知人を、試合後に案内することも増えた。
「そういうことも含めて、今はベルリンでの生活がすごく楽しい。自分で言うのもなんだけど、ものすごい変化だよね!」
実はこうした原口の変化は、これまでの課題となっていた部分を克服することにもつながった。
原口が人一倍トレーニングに熱心なのはここまでに記してきた。実際、オフシーズンは短期間、身体を休めたのち、精力的にトレーニングに取り組んできた。だから、プレシーズン初日のコンディションの良さはチーム内でも群を抜いていた。
それもあって、以前はシーズンの前半戦にシーズンのなかでのベストなパフォーマンスを見せることも多かった。ただ、後半戦になると、他の選手がコンディションを上げてくることや、シーズン前半戦から追い込みすぎたことも関係しているのだろうが――相対的なコンディションは下がっていた。
しかし、昨シーズンは違った。
前述したマインツ戦も、古巣ヘルタとのダービーで値千金のダイビングヘッドでのゴールを決めたのも、シーズン後半戦の出来事だった。
「コンディショニングについては、昔は結構、数年先を見てトレーニングしすぎていた部分はあった。数年後に大きなクラブに入るため、『もっとやらなきゃ!』と。
でも、そういう焦りはなくなって、今は目の前の試合に向けてコンディショニングできるようになった。長いシーズンの中には、試合日の朝に『あぁ、今日は身体が重いな』と感じることがあったんだけど、今はそういうのもない。谷川先生(*パーソナルトレーナーの筑波大学・谷川聡准教授)とのトレーニングを通じて、自分の身体を理解してきたから。試合の数日前に身体が重いと感じても『このくらいなら、明後日までによくなるだろうな』と安心して取り組めたりね。
とにかく、余裕ができたということなんだ」
監督からの、唯一とも言える“注文”とは
昨シーズン、フィッシャー監督から唯一とも言える注文をつけられたのが、試合中の運動量の変化だった。
先発で使ってもらいながら、60分ほどで交代を命じられることが多かったのだが、それは60分を過ぎたあとに運動量が減るように監督が感じているからだと聞かされた。
そんな状態で迎えた今シーズンの開幕戦。試合開始時から飛ばしていき、78分に交代するまでチームトップの走行距離を記録した。少しずつ、課題を克服しようとして動いている。
今シーズンのウニオンはELとの両立を考えて、インサイドハーフの選手を大量補強。リーグ戦で開幕から2試合続けてスタメンを飾ったものの、最近はベンチスタートが増えている。しかし、そのことを問われても原口は決して慌てない。
「ポジションに関しては、奪う時も、奪われる時も一瞬なので。奪い返す時も一瞬だと思っていて。その一瞬を虎視眈々と狙うだけでしょ」
続く最終編の#4では、ウニオンがブンデスリーガで単独首位につける秘密と、そんなチームで原口がどんな野望を抱いているのかを紹介していく。
<#4につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。