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「昔はハリルさんに怒られたけど」「ドイツ語力も…」30代となった原口元気に「心の余裕ができた」2つの決定的理由
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBoris Streubel/Getty Images
posted2022/09/27 11:09
ウニオン・ベルリンで戦術眼を磨いた原口元気。プレースタイルの変貌について、彼に聞いてみた
マインツ戦の前に、紅白戦が行なわれたのだ。とても珍しいことだった。なぜ、ウニオンで紅白戦が珍しいのかは、次回(#4)に譲るとして……。
こんなチャンス滅多にないだろ! ここで良いパフォーマンスを見せるんだ。
自分に言い聞かせた原口は、攻守両面で躍動した。
「ひょっとしたら昨シーズンのベストパフォーマンスだったかも……」
そう振り返るほどの出来だったから、週末のマインツ戦でスタメン出場した。
そして、実に283分もゴールから見放されていたチームに、待望の先制点をもたらした。クロスがこぼれる場所を見極め、右足ダイレクトに振り抜いて決めた一発だった。
原口のゴールによって負のサイクルを打ち破ったウニオンは3-1で快勝し、苦境を脱した。原口にとってだけではなく、クラブ史上初の5位に入ったチームにとってもターニングポイントとなった試合だった。
ビッグチャンスを活かせた2つの理由とは
ビッグチャンスを活かせた理由は2つあった。
1つ目は、コミュニケーション能力が向上したから。
「俺は、監督に意見を伝えにいくのはもともと苦手ではなくて。ただ、過去を思い出すと、ハリルさん(*元日本代表監督のハリルホジッチ)のときになぜ、使ってもらえないのかを聞きに行き、逆に怒られたこともあったし(笑)。実は監督へ聞きに行ったところで、プラスにならないみたいなこともあって。
要は、そのときの状況が、監督と話をするべきタイミングなのかどうかを、監督の様子を見て判断できるようになったということじゃないかな」
実は、アウクスブルク戦で途中交代を命じられたとき、監督が自身のパフォーマンスに満足していないことを感じていた。アシスタントコーチからも、そういうニュアンスの話をされた。
童話の「北風と太陽」のように、ここで監督に直談判をしにいくのは、北風を吹かすようなものだと原口は考えた。だから、黙々と練習に励んだ。悔しさを態度で表すのではなく、チームに欠かせない存在であるとプレーで示すために。
俺は1分でも長く試合に出たいし……
ちなみに、最近の原口は日本代表でも似たような振る舞いを見せている。
森保一監督の下ではほとんどの試合で〈4-2-3-1〉を採用してきた代表は、2021年10月のオーストラリア戦から〈4-3-3〉へ基本システムを変更した。
ただ、〈4-3-3〉が採用された直後は、原口がインサイドハーフの選手として評価されている様子はなかった。ブンデス1部の舞台でインサイドハーフに本格的に挑戦し、アシストを量産していたにもかかわらず。
だから、自分の思いを伝えるために森保監督に直談判したとしても、大それた行動ではなかったはずだ。