酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ダルビッシュ36歳「MLB屈指の奪三振マシン+安定感」の円熟… 日米200勝と“黒田博樹や野茂英雄らが未到の大記録”も見てみたい
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHarry How/Getty Images
posted2022/09/21 11:04
ダルビッシュは36歳の今も変幻自在の変化球、威力満点の直球でメジャーの強打者相手に奪三振を量産している
その上で筆者は個人的に――NPBに帰ってきてもう7勝を積み上げ、前人未到の「日米両方で100勝」も達成してくれれば、とも思う。
2011年、日本ハムのダルビッシュは空前の投球を続けていた。
28試合18勝6敗232回で276奪三振、防御率1.44、この年急成長を遂げた楽天の田中将大が27試合19勝5敗226.1回で241奪三振、防御率1.27を記録したためにタイトルは最多奪三振だけにとどまったが、試合で見るダルビッシュの迫力はすさまじく、打者を全く寄せ付けなかった。当時の吉井理人投手コーチが「わしの夢がかなった」と言うほどの投球だった。
しかしダルビッシュの気持ちは必ずしも晴れなかった。球場で顔を合わせた相手チームの主力打者に「お手柔らかに頼むよ」と言われ、残念な気持ちがしたと言う。彼はひりひりするような「勝負」を求めていたのだろう。
圧巻だった2011年にブログで記していたこと
この年、彼はブログでこのような内容を記している。
《結果を求めるのではなく、内容や取り組み方をしっかり求めたい。
何勝したとか、防御率がどうだの何三振取っただの多くの人はそこを見るし、騒ぐけど。
やっぱり結果は結果であって、取り組み方が比例するわけではないし運の要素も強い。
(中略)
ただ自分の求める「内容」「取り組み方」を未来の自分に納得いかせるには、
やっぱり前進するしかないし、超えるしかない。
日々直面する数々の誘惑に打ち勝つしかない。》
この年のオフにダルビッシュはポスティングシステムでレンジャーズに移籍した。そして、「(タイガースの三冠王打者)ミゲル・カブレラはどこに投げても打ち返してくる。投げるところがないけど(対戦するのが)すごく楽しい」という言葉を残した。ダルビッシュはMLBでの新たな挑戦を楽しみ、やりがいを見出し、進化し続けたのだ。
あれから11年、ダルビッシュの長い旅路はそろそろ終盤に差し掛かろうとしている。いちファンとして、筆者はダルビッシュが思う通りの《最高のエンディング》を迎えてほしいと思う。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。