酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ダルビッシュ36歳「MLB屈指の奪三振マシン+安定感」の円熟… 日米200勝と“黒田博樹や野茂英雄らが未到の大記録”も見てみたい
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHarry How/Getty Images
posted2022/09/21 11:04
ダルビッシュは36歳の今も変幻自在の変化球、威力満点の直球でメジャーの強打者相手に奪三振を量産している
勝利数だけでなくダルビッシュは、2013年には277奪三振で最多奪三振、2020年には8勝で最多勝のタイトルを取っている。NPB出身投手でMLBの投手タイトルを取ったのは、他には野茂英雄が1995年と2001年に最多奪三振を取った例があるだけだ。
2020年の最多勝が短縮シーズンでも価値が高いワケ
とりわけ2020年の最多勝は、コロナ禍で60試合に短縮されたショートシーズンとは言え価値が高い。この年は、レッズのトレバー・バウアーと激しいナ・リーグのサイ・ヤング賞争いをした。
<最終投票の結果>
T・バウアー 201.0ポイント(1位票27)
11試5勝4敗73.0回100振 率1.73(1)
ダルビッシュ有 123.0ポイント(1位票3)
12試8勝3敗76.0回93振 率2.01(2)
勝利数、投球回数もダルの方が上だったから、筆者などは受賞間違いなしと思っていたのだが……。なお、ダルビッシュは2013年にもア・リーグのサイ・ヤング賞で2位になっている(1位はタイガースのマックス・シャーザー)。
今季の安定感を示す「QS率とK/BB」
今季のダルビッシュ有は、28試合176.2回を投げて15勝7敗、183奪三振、防御率3.05。チームの絶対的なエースとして、シーズン通じてローテーションを維持した。
勝利数はナ・リーグ4位タイ、奪三振数は7位、防御率は8位と圧倒的な成績ではない。サイ・ヤング賞の最終候補には残らないだろうが、今年のダルビッシュを象徴的に表す数字がQS(クオリティ・スタート)だ。先発で6回以上投げて自責点3以下というこの数字は、先発投手の安定感を現す指標としてMLBでは勝利数以上に重要視されている。
ナ・リーグのQS5傑は以下のようになる。%はQS率(QS÷試合数)
1 ダルビッシュ有(パドレス)23 / 82.1%
28試15勝7敗 率3.05
2 S.アルカンタラ(マーリンズ)22 / 73.3%
30試13勝8敗 率2.37
2 M.フリード(ブレーブス)21 / 75.0%
28試13勝6敗 率2.52
4 J.マスグローブ(パドレス)20 / 74.1%
27試10勝7敗 率3.16
4 M.マイコラス(カージナルス)20 / 66.7%
30試11勝12敗 率3.46
ダルビッシュはQS数でリーグ1位、そしてQS率も82.1%で1位だ。ダルビッシュはリーグ随一の安定感ある先発投手だと言ってよい。
ちなみに4位タイには元巨人で、奥さんが美人のマイコラスの名前もある。カージナルスは中地区首位。勝ち星には恵まれないが、彼も先発で頑張っている。