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「いつかパートナーと滑りたいと思って」浅田真央31歳がアイスショー「BEYOND」に込めた想い。愛を深めるシーンは官能的に…
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/09/14 11:02
自らが座長を務めるアイスショー「BEYOND」で氷上に戻ってきた浅田真央
「去年の11月から練習を始めて、本当にいろいろなことがあって皆で泣いたり笑ったりして乗り越えてきました。私達にしかないチームワークも、このショーの魅力です」
「いつかパートナーと滑りたいと思っていました」
浅田が「チームワーク」という通り、10人のスケーターが様々な役に扮して、入れ代わり立ち代わり登場する。使う衣装が約100着と聞いただけでも、その演出の濃密さも、10人の「早着替え」の忙しさも伝わってくる。
「シングル時代には、本当はパートナーが居るようなストーリーを1人で滑っていたので、いつかアイスショーでパートナーと滑りたいと思っていました。それを今回取り入れました」
浅田がそう語るのは、柴田嶺と2人で滑る『シェヘラザード』。面白いことに、2人の滑りのカーブが非常に合っていて、長年共に滑ってきたペアスケーターのような安定感がある。もちろんペア経験者である柴田の力量によるところも大きいと思うが、ショーの中の1つのナンバーにするには惜しいほど、2人の相性が良いのだ。
愛を深めるシーンは官能的で…
特に、2人が愛を深めるシーンは、官能的で、新しい浅田の一面を見ることができる。またスピード感のあるリフトや、ローテーショナルリフトなど、そのままアイスダンスの試合に出られそうなレベルの技も詰め込まれている。妖美さを得た浅田と、その色香をうまく引き出す柴田が、闇の色濃いシェヘラザードの世界を描き出していた。
中盤では、浅田のソロナンバー『バラード第1番』も印象深い。2010年バンクーバー五輪で銀メダルを獲得した後の浅田が、新たな飛躍を目指し奮闘していた20歳の頃のエキシビションナンバーを、12年の時を経てアレンジしたものだ。
「バラード第1番は、孤独をテーマにしています。スクリーンにも涙がしたたるような演出があるのですが、最後は孤独に打ち勝って、力強く終わるというものです」
このプログラムでは、3回転ループやダブルアクセル、Y字スピンなど、20歳の時と同じ技術も入れており、劣らないジャンプ力を見せてくれる。そして最後は、深い孤独とそこからの脱却を、激しいツイズルで表現する。