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「いつかパートナーと滑りたいと思って」浅田真央31歳がアイスショー「BEYOND」に込めた想い。愛を深めるシーンは官能的に…
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/09/14 11:02
自らが座長を務めるアイスショー「BEYOND」で氷上に戻ってきた浅田真央
必見は、全スケーターがそれぞれの個性を発揮する「SWAN LAKE」だ。白鳥に姿を変えた浅田が、柴田の扮する王子と2人で演じる「パ・ド・ドゥ」は、息を呑む美しさ。初挑戦のスロージャンプや、ローテーショナルリフトなど、ペアやアイスダンスの技を多彩に盛り込んだ、とてもレベルの高い内容だ。女性スケーターによる白鳥の群舞は、バレエ版に忠実な演出で、湖の情景を描き出す。
さらに悪魔ロットバルトの田村岳斗が登場すると、舞台の空気が一変する。目線1つで緊張感を醸し出せるのは、やはり43歳になった田村の存在感あってのこと。しかも高さのある3回転ジャンプやバタフライで、技術面でも圧倒してくれる。そこに黒鳥となった浅田が現れ、32回のグランフェッテを、激しいツイズルの連続で見せる。
圧巻の演出と新たな技術で目の離せないアイスショーに
最後に王子と白鳥が湖に身を投じるまで、圧巻の演出でバレエの世界へと観客を引き込む。暗転から一呼吸おいて、会場からはバレエ全幕を見たかのような拍手が沸き起こった。
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このほかにも、新たな技術を浅田がみせてくれる場面もあり、最初から最後まで目が離せないアイスショー。
「私もペアのリフトやジャンプ、新しいパフォーマンスなどいろいろなことに挑戦しているので、『BEYOND』の乗り越えるというタイトルを感じていただければと思います」
浅田の性格からすると、今後の公演でもますます新たな技術や演出に磨きをかけていくことだろう。
また演技内容だけでなく、「観客への思い」が溢れるショーだ。まずチケットの価格が安い。通常のアイスショーでは、豪華なスケーターが出演することもあり、アリーナ席では2万円超えが当たり前。家族4人で見たら10万円をくだらない。しかしサンクスツアー時代から浅田がこだわっているのは「スケートのショーはチケット代が高い。私の現役時代に生で見られなかった方、地方の方、小さな子どもたちにも気軽に見てほしい」という思い。そのためチケット代は1万円前後に設定し、地方都市を興行する。しかも県民優先販売を行うことで、地元の人が見られるように配慮している。