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実の父親に「このクソ野郎!」朝倉未来と対戦…メイウェザー45歳とは何者か? 父親が私に明かした「ドラッグの売人になるしかなかった」 

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林壮一

林壮一Soichi Hayashi Sr.

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photograph byGetty Images

posted2022/09/24 11:04

実の父親に「このクソ野郎!」朝倉未来と対戦…メイウェザー45歳とは何者か? 父親が私に明かした「ドラッグの売人になるしかなかった」<Number Web> photograph by Getty Images

元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(45歳)。9月25日に格闘技イベント「超RIZIN」で朝倉未来(30歳)と対戦する

 当時のジュニアは「Money」ではなく、「Pretty Boy」がニックネームだった。自らハンドルを握ってワンボックスカーで待ち合わせ場所にやって来た彼は、車内に備え付けられたTV画面で直近の自分のファイトを再生し、「いい試合だっただろう」と微笑んだ。

 デビュー時から、まったく相手のパンチをもらわない高度なディフェンスを見せていたが、18戦目に百戦錬磨のベテラン王者、ジェナロ・“チカニート”・ヘルナンデスを8回終了TKOに追い込んだファイトは圧巻だった。

 オープニングベルが鳴ると、挑戦者は前後に速いステップを踏み、ジャブを上下に打ち分けた。リズムに乗り、ロングフックを見舞う。183センチあるチャンピオンの長いリーチを掻い潜っては、接近戦を仕掛け、打ち勝った。ヘルナンデスをスピードで翻弄した。

 その一戦について質すと、「彼は偉大な選手だけれど、自分のボクシングをやれば負けないと思っていた。こちらの方が、左ジャブの精度が上だったよね」と答えた。

 新旧交代を告げられたヘルナンデスは、この試合を最後に引退を発表。その後の3名の挑戦者はヘルナンデスほど危険な相手ではなく、メイウェザー・ジュニアは実力差を見せつけてタイトルを防衛する。

人生最大の喜びは「父が出所した日だね」

 私のインタビュー時、「ボクシング史に名を残す存在になりたい」と語っていた彼だが、これまでの人生で最大の喜びを感じた瞬間は? という質問に対して放った言葉が今でも耳に残る。

「父が出所した日だね」

 22歳の彼にとって、父親の存在がどれだけ大きいかを物語っていた。プロデビューから16戦は、叔父のロジャーをチーフセコンドとしてリングに上がったが、世界前哨戦からは父親と共に戦っていた。

 メイウェザー・シニアはシュガー・レイ・レナードや、マーロン・スターリングといった世界王者との対戦経験がある。親子の歩みをこう振り返った。

「息子(ジュニア)が1歳の時に、グローブを買い与えた。才能にも恵まれていたし、ボクシングIQも高かった。8歳から試合に出て、連戦連勝だったよ。アトランタでだって、本来なら金メダルを獲れた筈だ。負けたのは、不可解な判定以外の何物でもない」

 そう言うとシニアは、穿いていたスラックスの左足を捲ってみせた。

【次ページ】 なぜメイウェザーは“人気に欠ける”王者だったか?

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