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リーゼント、特攻服、愛読書はビー・バップ…逮捕も経験したボクサー和氣慎吾(34)に聞く「なぜボクシングから“ヤンキー”が減ったのか」

posted2022/04/02 11:00

 
リーゼント、特攻服、愛読書はビー・バップ…逮捕も経験したボクサー和氣慎吾(34)に聞く「なぜボクシングから“ヤンキー”が減ったのか」<Number Web> photograph by Shimei Kurita

34歳になった今も「世界」を諦めない和氣慎吾(34歳)。代名詞となっている“リーゼント”へのこだわりも語った

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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Shimei Kurita

 ぴいぴいぴい ぴいぴいぴい ぴいぴいぴい ぴいぴいぴい……♪

 長渕剛の曲に合わせ、ビシッとセットされたリーゼントとは裏腹に、軽快なジャブを打つ。

 武蔵境駅から徒歩5分。FLARE山上ジムで汗を流す和氣慎吾(わけ・しんご/34歳)は、何か吹っ切れたようだった。ド派手な髪型からはリンクしない、華麗なサウスポースタイルが目をひく。『ろくなもんじゃねえ』と長渕の歌声が館内に響き渡り、和氣の表情は少し緩んだ。

「気合いを入れたい時、自然と長渕さんの曲の割合が多くなるんです」

 昨年11月、キャリアの全てをかけて臨んだWBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座決定戦で井上拓真に敗れてから、4カ月の月日が流れた。実に10年以上に渡りスーパーバンタム級のトップ戦線で戦ってきたが、いつも既の所で“世界”には届かなかった。井上拓真に敗れた今回が3度目の頓挫だった。引退も考えたという。だが、和氣は再びリングに戻ることを選んだ。

「岡山のヤンチャ小僧が、ボクシングに出会って救われた。リーゼントボクサーとして、いろんな縁も生まれた。でもまだ、リングで伝えたいことが残っているんです」

学校一の不良と“タイマン”

 岡山市で育った和氣のボクシングとの出会いは13歳まで遡る。ごく普通の中学生だった和氣は、ある日なぜか学校一の不良に絡まれた。殴り合いのタイマンに発展するが、結果は完敗。この日を境に、心の奥底に秘められた何かが弾けた。

 毎日近所のボクシングジムに通うと同時に、ヤンキーファッションへの関心を高めていく。愛読書は昭和のツッパリたちのバイブルでもある漫画『ビー・バップ・ハイスクール』。床屋で初めてリーゼントヘアーをオーダーしたのもこの頃だ。『ガチンコ!』で放送していた「ファイトクラブ」も夢中で見ていた番組の1つだという。

 その後、例のタイマン相手とはなぜか馬が合い、周囲から「不良」と呼ばれるのに時間はかからなかった。中学を卒業する頃には、県内の番長が岡山駅に勢ぞろいする、通称「岡一」にエントリーするまでのエリートヤンキーになった。

「ワルといっても片田舎の中学生ですから。せいぜいバイクを乗り回して暴走、喧嘩に明け暮れたり、タバコを吸ったり、とその程度です。でも、負けるのだけは嫌いでした。最初はただ強くなりたい、と思って始めたボクシングだけは一日も休んだことがなかった」

【次ページ】 中学よりも荒れた高校生活、逮捕も経験

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