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羽生結弦が「24時間テレビ」で北京五輪のショートプログラムを演じ切った意味「氷に嫌われちゃったなって…」あの“心の傷”を乗り越えて 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2022/08/28 20:00

羽生結弦が「24時間テレビ」で北京五輪のショートプログラムを演じ切った意味「氷に嫌われちゃったなって…」あの“心の傷”を乗り越えて<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

24時間テレビで2021-2022シーズンのショートプログラムを披露した羽生。その演技に込めた意味とは…?

「ジャンプだけじゃなく全部見ていただけるプログラムに」

「具体的な物語が、何か曲に乗せる気持ちが強くあるプログラムになっているので、ジャンプだけじゃなくて、全部見ていただけるようなプログラムにしたいと思っています」

 全日本選手権に続いて滑る場となったのが、北京五輪だった。4年に一度の大舞台こそ、羽生の目指す完成形の披露にふさわしかった。

 だがそれは砕かれた。冒頭の4回転サルコウが1回転にとどまったのだ。

「穴に乗っかりました」

 試合のあと、羽生はその理由をこう語った。

 2019年の世界選手権の6分間練習のときに自身のエッジで作ったトレースに、演技の中ではまったことがあった。その経験をいかし、6分間練習で少しずらして跳び、試合では本来の軌道で入ろうとしたが、そこには他の選手が空けた穴があった。経験をいかして備えた上での、どうにもならない出来事だった。

「もうなんか……。いや、正直言って、なんか僕、悪いことしたかなって思っています。なんか悪いことしたからこうなってしまったのかなあって」

「すごくいい集中状態で、何一つほころびもない状態だったのでミスの原因を探すと整理がつかないですね。スケートの方でのミスはまったくなかったので。なんか、嫌われることしたかなって。すごい、氷に嫌われちゃったなって」

 苦笑まじりの口調ではあっても、言葉は痛切に響いた。ミスではないからこそ、なおさらだった。そして、オリンピックへ向けての準備が万全であったことも伝わってきたし、なおさら、理想とする演技を披露する機会がアクシデントで失われた喪失感も思わせた。

 その痛みの大きさが、「心の傷」という言葉にあった。だから、あらためて挑む重みもうかがえた。

【次ページ】 「初めて自分の中での完成形として滑りきれたなって」

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