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羽生結弦が「24時間テレビ」で北京五輪のショートプログラムを演じ切った意味「氷に嫌われちゃったなって…」あの“心の傷”を乗り越えて
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/08/28 20:00
24時間テレビで2021-2022シーズンのショートプログラムを披露した羽生。その演技に込めた意味とは…?
「初めて自分の中での完成形として滑りきれたなって」
失敗できないという重圧はあっただろう。その中で羽生は、完璧に滑り切った。「耐えたジャンプもあったんですけど」と振り返る全日本選手権と異なり、3つのジャンプをきれいに決めた上で、全日本選手権で示唆した完成形と思える進化を証明した。競技時と同じ構成で臨んだこと、リンクに上がる前からの緊張感、演技後のしぐさや表情には、ここに懸ける思いがあふれていた。番組内で羽生は演技後、こうメッセージを伝えた。
「初めてちゃんとこのプログラムが、自分の中での完成形として滑り切れたなっていう風な思いがあります。僕もすごい怖くてなかなか踏み出せずにいたプログラムの一つですけど。でもやっと、これを乗り越えてまた前に進めるなって僕自身が思えたので。皆さんの中で、ほんの1秒でもいいので、前に進むきっかけになっていたらいいなと思います」
プロへの転向を表明したとき、「さらに成長していきたい」と羽生は語った。8月10日に実施した公開練習時の動作や滑りからは、その言葉通り、進化を志す姿勢にかわりがないことが見てとれた。番組内で披露した演技は、あらためてそれを証明する時間でもあった。
3つのジャンプを成功させたのはむろんのこと、音を捉えきる滑りも全日本選手権以上に研ぎ澄まされていた。また、その演技を実現できたのはプロに転向してもなお、練習の密度を一切下げることなく努力を続けている姿勢があったからこそだった。
競技会の白い照明とは異なり、暗く落とした照明のもとでの演技は、新たなスタートを切ったことを象徴しているようでもあった。
羽生が今回の挑戦を通じて伝えたのは、過去と向き合い、それを力にもかえて乗り越え、進んでいく意思だ。
そのことは見た人の背景を問わず、普遍性を帯びて、画面を通して伝わったはずだ。
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