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那須川天心24歳に問う、“ボクサーとして本当に12ラウンド闘えるのか?”「僕は4ラウンド以上のスパーリングを経験したことがない」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRyo Saito
posted2022/08/25 17:01
Number最新号『格闘技に何が起きているのか。』でロングインタビューに応えた那須川天心(24歳)
「武尊選手の存在が羨ましくもあり、悔しくて仕方なかった。唯一意識していました。だって僕より目立つなんてあり得ないことなので。『俺が主役なのに、なんで俺以外の格闘家がテレビに出ているんだよ』と思っていました」
これが厭味に聞こえないのは性格がピュアな少年のままのせいだろうか。武尊との一戦を熱望していた一番の動機は反骨心だった。那須川にとっても、武尊戦はやり甲斐のある大一番だったのだ。「だからこそ武尊選手には感謝しかありません」
ボクサーとして12R闘い切れるのか?
近い将来ボクシングに転向しても、自分の色は大切にしようと心に決めている。
「ボクシングの世界に染まりすぎてもいけないと思う。そうしないと、無個性なボクサーになってしまうので。強さはもちろんのこと、那須川天心だからこそできることをボクサーになっても伝えていきたい」
キックの世界では延長戦を含めても6Rまでの闘いが最長だったが、ボクシングで世界タイトルマッチに挑むとなると12Rもある。倍のラウンド数はキック時代からの大きな変化と言えるだろう。那須川はボクサーとして12R闘い切れるのか。
「それはまだ未知数ですね。それこそまだ僕は4R以上のスパーリングは経験したことがない。まわりは『やっていけば、慣れる』と肩を叩いてくれますけど、こればっかりはやってみないとわからない」
これまでは素足で闘っていたが、新天地ではボクシングシューズを履く。その違いを聞くと、那須川は「全然違うんですよ」と身を乗り出しながら語気を強めた。
「(シューズによってグリップ力が強まるので)パンチのスピードやキレは増す」
アマ時代を第1章とするならば、キック時代は第2章で、これから先のボクシング編は第3章となる。どんな章にしたいかと水を向けると、那須川は「ゴールはあえて決めたくない」と意外な言葉を口にした。
「キック時代とかとくにそうだったけど、何が正解とかないじゃないですか。僕は霧がかかっているところで新たな道を切り開いていく生き方が好きなんですよ」
過去は振り返らない。那須川は「現在」を最も大切にする。
「人生は一回しかない。いまこの瞬間は未来でも味わえない」
キックやMMAに比べると縛りが強いと言われるボクシングでも、マッハの革命児は我々を驚かせ続けるのか。
もうすぐ長い夏休みが明ける。
<前編から続く>
那須川天心(なすかわ・てんしん)
1998年8月18日、千葉県生まれ。幼少期より空手、キックボクシングで活躍。14年7月のRISEでバンタム級ランカーを58秒KOで下しプロデビュー。15年5月には史上最年少でRISEバンタム級王座を獲得。今年6月の武尊戦での勝利を最後に無敗のままボクシングへの転向を表明。165cm