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「キヨハラさん…ですよね?」英雄か、犯罪者か。清原和博が甲子園に受け入れられた瞬間「ぼく、あんなところまで飛ばしたんか…」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/08/20 17:07
甲子園100回大会の決勝戦に訪れ、記者席上のボックス席から観戦する清原和博(2018年撮影)
見つめる宮地の視線の先で、片方の男が言った。
「応援してます。頑張ってください」
そしてスマートフォンを取り出すと、こう言った。
「あの、写真......撮っていいですか?」
清原は一瞬、きょとんとしていたが、すぐに頷くと、「ありがとうございます。大丈夫です」と応じた。
清原が甲子園に受け入れられた瞬間
そのやり取りをきっかけに周囲の人々も清原の存在に気づいたのだろう。期せずして客席の一角から拍手が起こった。それはほんの一瞬の出来事であり、球児たちに贈られたものに比べればごくささやかだったが、たしかに清原が甲子園に受け入れられた瞬間だった。
「ぼく、33年前、本当にここにいたんですね......」
清原は笑った。はっきり笑みとわかる表情だった。逮捕されてから何をもってしても取り戻せなかったものだった。
夏空が球児たちと清原を包んでいた。宮地はもう一度だけ、甲子園の空に向かって祈った。できることなら、このまま時間を止めてもらいたかった。
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