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〈36歳に〉ダルビッシュ有を支える、クラブハウスでの“家族との会話”「うちはアメリカっぽい」「父親に戻ることが、一番の切り替え」
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2022/08/16 17:00
今季もすでに10勝を挙げ、好調をキープしているダルビッシュ有
そういえば、サンディエゴでの登板時には球場で聖子夫人や子供たちの姿をよく見かける。今回は遠征地ワシントンDC。試合後、ダルビッシュはスマートフォンの画面越しに家族と会話を重ねていた。クラブハウスでの出来事なので、聞き耳を立てなくとも自然と声が聞こえてくる。普通の夫婦の会話であり、父と子の会話。お互いを思いやる言葉にこちらの心まで和んだ。
その3日前のことだった。ダルビッシュは『家族』について自身の思いを口にした。
栗山監督からの勧誘「野球博士というか…」
WBCを来春に控え、侍ジャパンの栗山英樹監督がサンディエゴのダルビッシュのもとを訪ねたときのことだ。栗山監督はストレートにダルビッシュへの思いを表現した。
「年々、野球博士というか、野球を分析しながら、学問のように投げかけてくれたことが日本の野球界が進んだ要因だと思う。そういったすべてのことを含めて、敬意を持ってずっと見させてもらったので、久々に会えて嬉しかった」
そして、勧誘の言葉も述べた。
「(WBCに)出る出ないは別問題ですけど、アメリカチームを倒すためにやりますと言っている中で、『このバッターはこうですよ』、『こういうときはこうなりますよ』というような、僕らではわからないことがいっぱいある。経験した人たちにしかわからないノウハウであったり、やり方であったり、一言のアドバイスが本当に大きなものになるのは間違いないんでね。そういった思いを持って動くのが僕の任務。そういうことです」
06、09年のWBC連覇では、メジャーリーガー・イチローが精神的支柱となりチームを牽引した。2大会連続でMVPを獲得した松坂大輔も然り。レッドソックス在籍時の09年大会は下半身に不調を抱えながらも、14回2/3を投げ3勝。投手陣のリーダー役も務めた。栗山監督にしてみれば、この役割を期待したいのがダルビッシュだろう。魂を込め、その思いを伝え、ダルビッシュにも十分に届いた。
「いろいろ話していただきましたけど、光栄な言葉ばかりかけていただいて本当に感謝の気持ちでいっぱいです」