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グレートマジシャンに私たちは夢を見た…生涯わずか5戦、ダービー4着、藤沢和雄元調教師も「この馬は凄いぞ」と評した“異次元の末脚”を忘れない

posted2022/08/12 11:00

 
グレートマジシャンに私たちは夢を見た…生涯わずか5戦、ダービー4着、藤沢和雄元調教師も「この馬は凄いぞ」と評した“異次元の末脚”を忘れない<Number Web> photograph by Photostud

7月30日、関越Sに出走したグレートマジシャン。昨年の日本ダービー以来1年2カ月ぶりのレースだった。通算5戦2勝

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田井秀一(スポーツニッポン)

田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai

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 2022年7月30日、夏の新潟競馬開幕週。その初日のメインレース「関越S」で悲劇が起きた。2021年日本ダービー(4着)以来、1年2カ月ぶりにターフに帰ってきたグレートマジシャンが最後の直線半ばで右第1指関節脱臼を発症し競走中止。予後不良と診断され、安楽死の措置が取られた。本記事では同馬が駆け抜けた足跡を振り返る。

ルメールをして「幼いけど、この馬は走る」

 09年ドイツ年度代表馬ナイトマジック(09年ドイツオークス、10年バーデン大賞を優勝)の6番子として、グレートマジシャンは2018年5月7日にノーザンファームで誕生した。父は日本競馬界の至宝ディープインパクト。新潟ジャンプSを勝ったフォイヤーヴェルクなど兄姉が堅実に成績を出しており、良血として若駒時代から大きな期待をかけられて育った。ただ、3月に出産のピークを迎える日本のサラブレッド生産では遅生まれにあたる5月生まれ。2歳時は「3、4月ぐらいまでは他の馬より一周遅れている感じ」(宮田敬介調教師)だったといい、騎乗トレーニングに入るのが育成を担ったノーザンファーム早来で最も遅かったほど。同期のライバルがデビューしていく中、じっくり成長を促された。

 結局、デビューは2歳の11月。その頃にはメキメキと力をつけ、調教では格上馬を圧倒する走りを見せるようになっていた。新馬戦は着差こそ2着馬に頭差と地味だったが、直線で他馬にかわされるたびに差し返す離れ業。ルメールをして「幼いけど、この馬は走る」と言わしめた。

 そして、2戦目・セントポーリア賞の衝撃は競馬ファンなら覚えている方も多いのでは。出遅れのロスがありながら、のちにダービートライアルのプリンシパルSを完勝するバジオウを寄せ付けず、2馬身半差の圧勝。上がり3Fのタイムはメンバー最速の33秒3をマークしたが、同2位のバジオウが34秒2。ベールを脱いだ異次元の末脚は見る者を魅了した。ルメールの評価も「走り方はまだまだ子供っぽいが、凄くいい」とさらに期待値が上がった印象を受けた。

【次ページ】 セントポーリア賞から毎日杯、日本ダービーへ

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