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甲子園の風BACK NUMBER
“甲子園中止世代”あの磐城高エースは今、神宮球場で…「あの時、同級生が野球をやめるのを止めてよかった」「同じ学年の人たちは仲間」
text by
元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph byNumber Web
posted2022/08/09 17:01
磐城(福島)から立教大に進学した沖政宗(2年生)
「同じ学年の人たちは『仲間』だと思っていて…」
「甲子園中止世代」に対する特別な思いもある。
「コロナがあったかどうかは、もう考えないようにしています。ただ一方で、少しおこがましいのですが、同じ学年の人たちは、コロナで甲子園が開催されなかったという意味では『仲間』だと思っていて。同じ気持ちを共有しつつ、野球を続ける、続けないにかかわらず、高め合っていきたいですよね」
あの夏のチームメイトはそれぞれの道を歩んでいる。
「監督さんとの面談で『野球が楽しいと思えない』『もう野球をやめる』と言った仲間が最後まで野球を続けてくれたことが、甲子園交流試合につながりました。別の大学に進んだ同級生のなかには、サークルで野球を続けている人もいますし、大学のスポーツ新聞を作っている人が『今度、取材に行くよ』と言ってくれたり……。やっぱりあの時、同級生が野球をやめるのを止めてよかったなって」
勝利しても甲子園につながらなかった福島県の独自大会、1試合だけの甲子園交流試合。最後まで戦ったからこそ、得られたものがあった。
「夏前に野球部が解散になっていたら、みんな、野球に関わることがなくなっていたと思います。そういう意味では本当によかった。あの夏、同級生から本当に助けてもらいました。その恩返し、と言ったら大げさですが、自分の責任としてこれからも野球を懸命にやると決めています。あの夏を背負って、投げていきたい」
沖のピッチングは劣勢で沈むチームを元気にする。見る者を熱くする。この秋、彼の奮闘で、神宮球場のスタンドは活気づくはずだ。
<前編から続く>
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