「勝てば優勝が決まる明治戦で負けて、『自分たちはこんなもんか？』という憤りを感じました。秋季リーグ戦で優勝して、4年生を気持ちよく送り出したい。あれだけ経験も、実力もある先輩方を優勝させられなくてどうするんだ、という思いはあります。

　優勝しないといけないというプレッシャーを一番感じているのは4年生です。それをカバ―するのが下級生の役割。僕は投げることで、チームに勢いをつけたい」

いま振り返る、あの夏のこと

　沖の成長、活躍はまさに「甲子園中止世代の逆襲」といえる。あの夏から2年、高校3年生でコロナ禍の直撃を受けたことについて沖はどう考えているか。

「例年とは違ったことが起こったので、『かわいそう』と言う人はいらっしゃると思います。でも、自分たち自身が『かわいそう』と思ったところで、これからの人生を生きていくうえでプラスにはならない気がします。

　コロナのせいで甲子園がなかったことはもちろん残念ですし、そんなことは同学年のすべての人がわかっていること。そうした過去に左右されることなく、これから自分たちが何をしないといけないのか、未来をどう変えていくかに目を向けることが大事なのかなと」

　センバツ出場が中止になった時、沖は真っ先に「応援してくださる方々」を思い出したと言った。そして今も……。

「リーグ戦には、大学の友人もたくさん神宮に応援に来てくれました。直接、面識のない方にもたくさん応援していただいています。

　過去は過去としてしっかりと受け入れて、応援してくれたり支えてくれたりする人に恩返しをしたい。プレーで見せることもそうですけど、これから自分に何ができるのかというところに重きを置いて、自分たちの世代はやらなきゃいけないのかなと思います」

【次ページ】　「同じ学年の人たちは『仲間』だと思っていて…」