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世界体操、独走の個人総合3連覇。
団体で見えた内村航平の強靭な心。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byHiroyuki Nakamura

posted2011/10/24 10:30

世界体操、独走の個人総合3連覇。団体で見えた内村航平の強靭な心。<Number Web> photograph by Hiroyuki Nakamura

内村(左)が達成した男子個人総合3連覇は史上初の快挙。ロンドン五輪、2013年世界選手権での新技「ウチムラ」の成功を目標にさらに技を磨く

 圧巻の演技だった。

 先日、東京体育館で行なわれていた体操の世界選手権で、内村航平は個人総合3連覇を達成した。

 史上初の3連覇も見事だが、内容が素晴らしかった。

 内村は、出だしの床で15.566点の高得点をマーク。跳馬から始めていた別の班の2人に次いで3位で発進すると、2種目めのあん馬でも15.400点の高得点でトップに浮上する。以降も他の選手を寄せつけず、現行ルールとなってからの国際大会では最高得点となる93.631点で、2位のボイ(ドイツ)に3点以上の大差で優勝したのだ。着地はすべての種目で決まり、完璧としかいいようのない演技を披露したのだから、この高得点も当然のことだった。

 中でも、演技の美しさを採点するEスコアでは、6種目中、5つで9点台をたたき出した。以前よりも姿勢のよしあしなどを厳しくジャッジするようになっている今日を考えれば、内村の演技の質がどれだけ高かったかを示している。

重圧のかかる大舞台で完璧な演技ができる、異常に強いメンタル。

 特筆すべきは、大舞台でこれだけ完璧な演技を披露することができたメンタルである。

 大会が始まる前、関係者たちは、「いつもどおりにやれば内村が優勝する」と予想していた。それくらい、内村の力が図抜けているからだ。

 だが、いつもどおりにやること、つまり、もてる力をふつうに発揮するということは、決してやさしいことではない。多くのアスリートは、強烈なプレッシャーと戦うものだし、力を出し切れずに終わってしまうことだって、少なからずある。だから予想どおりの結果に終わらないことは多々ある。

 内村は今回、世界選手権個人総合3連覇という大きな目標がかかっていた。日本での開催であったことを考えても、いつも以上に大きな注目と期待を寄せられていたのは間違いのないところだろう。

「点数は考えずに、ひとつひとつを丁寧にやることを考えていました」

 と、内村は答えているが、大きな期待が集まる中で、内心はともかく、見ている者からすれば、やすやすと、としか思えないくらいにあっさり、実力どおりの演技ができてしまうのは驚くほかない。

【次ページ】 ライバルは自分自身──傑出した実力者ゆえの克己心。

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