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林下詩美“復活宣言”のウラで…新設発表「IWGP女子王座」と朱里が保持するスターダムの頂点「赤いベルト」はどちらが上なのか?
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/08/02 17:06
7月31日、朱里に初めて勝利した林下詩美。スターダムの頂点「赤いベルト」をめぐる戦いが続くなか、「IWGP女子王座」の新設が発表された
それまで新日本プロレスの歴史とまで言われたNWF(世界)ヘビー級王座を封印して、新日本はベルトなしで2年間以上の興行を乗り切った。IWGPを正式にタイトル化するときもひと悶着はあったが、興行的にタイトルマッチを行うためにもベルトは必要だった。
人は歴史の証人だが、歴史は美化されやすい。レガシーが大きな足かせになる場合もある。IWGPだって、そんなにすごいタイトルかと言われたら、そうでもないときもあった。「ベルトの価値は王者が決めるものだ」と先人も言っている。
「暗黒の時代」と呼ばれる低迷期には、猪木色を取り払おうとした新日本プロレスだったが、良きにつけ悪しきにつけ幾多の伝説を残したIWGPというブランドとは運命共同体というスタンスを取った。そんな時代、ベルトは形を変えて棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカらへと受け継がれた。
「赤いベルト」とIWGP女子王座はどちらが上か?
スターダムの赤いベルトは、全日本女子プロレス時代から存在する赤いベルト(WWWA)ではないが、コンセプトは同じで現在のスターダムにおける最高峰のベルトだ。
では、IWGP女子王座ができたら、その順番はどうなるんだ? という素朴な疑問がわく。だが、それは赤いベルトとIWGP女子を巻く王者によって決まる、というほかないだろう。IWGP女子王座は新日本プロレスやスターダムがこれから世界で戦っていくための、目的に対する手段なのだから、その戦いを見ていくしかない。
「ブシロードグループになったころ、IWGP女子王座を作れたらいいですねって話したことがあるんです」
ロッシー小川エグゼクティブ・プロデューサーはそうブシロード側に話したこともあったが、当時は相手にしてもらえなかったという。だが、最近になってその話が木谷オーナーから戻ってきた。
ベルトの棲み分けという課題は小川EPの手に委ねられることになるが、「赤いベルトや白いベルトを封印することはない」という。
「赤いベルトと白いベルトはスターダムのスタンダード。歴史を簡単に塗り変えることはできないですから」(小川)
女子プロレス界に「IWGP女子王座」という強いブランドがもう一つ加わった、と受け取るのが妥当なのだろう。
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