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林下詩美“復活宣言”のウラで…新設発表「IWGP女子王座」と朱里が保持するスターダムの頂点「赤いベルト」はどちらが上なのか?
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/08/02 17:06
7月31日、朱里に初めて勝利した林下詩美。スターダムの頂点「赤いベルト」をめぐる戦いが続くなか、「IWGP女子王座」の新設が発表された
林下の目は生き生きとしていた。前日、ひめかにまさかのフォール負けを喫した林下詩美はもうそこにはいなかった。復活宣言の先には、朱里の赤いベルトに挑戦して再び「赤いベルトの女王」に戻るという野望がある。そのためにはこの『5★STAR GP』で優勝しなければいけない。
議論を呼ぶ「IWGP女子王座」の新設
林下がこだわっているのは赤いベルトだが、スターダムには「IWGP女子」という名の新王座が創設されることになった。ブシロードグループの新日本プロレスとスターダムに共通する名称のタイトルとして、木谷高明オーナーが7月29日に行われた戦略発表会でついに公にしたものだ。
IWGP女子の新王座決定戦は11月20日に有明アリーナでの新日本プロレスとスターダムの合同興行で行われるが、この日は4試合程度のミクスドマッチが予定されているため、この試合に出場する選手には初代王者のチャンスがない。
ファンの間ではいろいろと論議を呼んではいるが、このタイトルを「私はいらない」というレスラーは少ないだろう。
「世界戦略」を掲げる新日本プロレスとスターダムにはぴったりのアイデアだった。筆者は最初にこのプランを耳にしたとき、特に違和感を覚えなかった。IWGPはれっきとしたブランドとして認められているからだ。アメリカの経済誌『Forbes』のサイトでも、IWGPは脚注なしでIWGPチャンピオンとして表記されている。英国の『Metro』紙でもIWGPはIWGPとしてごく普通に扱われている。
プロレスの世界において、それくらい「IWGP」は通りがいい。
スターダムがアメリカや世界に乗り出していくなら、それは赤いベルトや白いベルトではなく「IWGP女子」の方が手っ取り早いというわけだ。IWGPにはタッグも、ジュニアヘビー級も、ジュニアヘビー級タッグもあるんだから、「この時代、女子王座があるのは当たり前だ」という考えだ。
アントニオ猪木から続く「IWGPの歴史」とは
IWGPには創設準備期から40年以上という長い歴史がある。だが、そのIWGPとて当時の巨大勢力NWAに対抗するために「挑戦させてくれないなら、それを越えるものを作ればいい」というアントニオ猪木の発想からできたものだ。