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YouTubeで異例の“470万再生超”…麻雀プロ・内川幸太郎が今明かす、Mリーグ史に残る“あの役満放銃”「それでも僕は西を切ると思う」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/28 11:01
KADOKAWAサクラナイツのメンバーとして、Mリーグ制覇を成し遂げた人気Mリーガーの内川幸太郎
本人が今明かす“あの役満放銃”の舞台裏
――晴れてMリーガーとなった2019-20シーズン、内川プロの人気を飛躍的に高めるきっかけになったのが、セミファイナル争いが佳境を迎えていた2月25日の第2戦のオーラス。葛藤の末に、黒沢咲プロ(TEAM雷電)に役満・四暗刻単騎を放銃した場面でした。
内川 まず前提として、僕は赤坂ドリブンズさんを非常に手強いチームだと思っていて、なるべくセミファイナルに連れていきたくなかった。同チームの村上淳さんにトップをとらせることなく、あわよくば自分がラス目から3着に浮上するためにはどうすればいいのか……という思考で、ラス親の勝又健志さん(EX風林火山)に連荘してもらえるようアシストしたんです。
――その狙い通り下家の勝又プロを鳴かせて連荘させ、迎えた南4局2本場。跳満をテンパイした内川プロは、勝又プロの7筒を見逃します。仮にロンすれば勝又プロは2着に転落し、村上プロのトップが確定。内川プロの順位は4着のまま、という状況でしたが……。
内川 おそらく53対47くらいで、あの7筒で跳満をアガる方が得なんですよね。ラスとはいえ、12ポイント(1万2000点)は素点が回復するので。でも、それでは前の局で勝又さんを鳴かせにいったプレーと辻褄が合わない。それくらい徹底的にドリブンズさんをマークしていたんです。僕らが優勝するうえで、間違いなく障壁になると思っていましたから。
よぎった不安「賛否の声を自分は背負えるだろうか」
――しかし、その裏では3着目の黒沢プロが「西」待ちの四暗刻単騎をテンパイ。最後のツモ(海底牌)でその西を引いたとき、苦悶に満ちた表情で約1分間の長考に入りましたね。
内川 あの表情は自然に出てしまいました(笑)。黒沢さんの押しが尋常ではなかったので、役満の可能性もある、と想定はしていたんです。そして、西は待ちとして本命に近い牌でした。とはいえテンパイを崩してオリれば、次局での着順アップ条件がさらに厳しくなってしまう。「役満かも」と思いながらも、頭のなかでさまざまなパターンをシミュレートしました。
でも、いざ切ってみて本当に3万2000点だったときはグラっときましたね……。もちろん自分の意思決定としては「正しい」と思っていましたが、単なる半荘の、単なるひとつのミスじゃない。何十万人という視聴者の方に見られている中でああいう形で放銃して、その後に待っている賛否の声を自分は背負えるのだろうか、という考えが頭を巡りました。