「『もう無理かな』って。3年目からは『社会人で頑張ろう』って思うようになりました」

　社会人のチーム名が「三菱重工East」に変わった今も、二橋は現役としてプレーする。

　都市対抗野球では所属チームのみならず、他チームの補強選手としても出場するなど実績を積み、今年で6年目を迎えた。プロの道は途絶えたが、新たなモチベーションが生まれたのだと、二橋は嬉しそうに言う。

「今でも取材されることがありがたいと思うようになったんですよね。大学までは『大谷のおまけだ』とか思うこともありましたけど、こうやって記事とかテレビとかで紹介していただくと、中学校の同級生とか友達の親御さんとかいろんな方が連絡をくれて。その度に『野球をやり切ろう』って思います」

「家族で大谷の試合を観戦したいんですよね」

　かつてのライバルは、今やメジャーリーグでもナンバーワンのプレーヤーになりつつある。今シーズンは、1918年にベーブ・ルースが打ち立てた偉業「2桁勝利、2桁ホームラン」の到達は、確実視されている。

　大谷が大きくなればなるほど、二橋は「あれはホームランです」と強調できる。

「あれだけメジャーリーグで活躍している選手について、今でも思い出話をできるって、そんな人なかなかいないじゃないですか。だから、歳を重ねるごとに、あの物議を醸したポール際のホームランも『すごいことをしたんだな』って思えるようになりました」

　二橋が球友に想いを巡らせる。

「家族で大谷の試合を観戦したいんですよね」

　岩手でしのぎを削ったスーパースターが、野球の最高峰の舞台でビッグフライを描き、160キロを超える剛速球を唸らせる。

　大谷！　大谷!!

　アメリカの球場でもきっと、二橋はかつてのライバルに届けとばかりにそう叫んでいる。

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