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野球クロスロードBACK NUMBER
聞かれ続けた「プロで大谷選手と対戦したい?」元盛岡大附・二橋大地が明かす、あの岩手大会決勝“物議のホームラン”からの10年
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2022/07/26 11:04
社会人野球の三菱重工Eastでプレーする二橋大地28歳。「大谷を倒した男」が明かす、“あのホームラン”からの10年
二橋はそれを、「約束」と言った。
「いつまで経っても、あれはホームランだからな。そこだけは胸を張って野球をやれ」
高校野球を引退後は自由も増えたため、世間の風評が耳に入りやすくなった。
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「思った以上に、騒がれてんな」
二橋が初めて動画サイトで疑惑に触れたのは、東日本国際大に入学してからだ。
「最初は『ん?』って思いましたけど(笑)。大学の友達と見ながら『(映像の)角度がわりぃよ!』とか言ったりしました」
このエピソードが物語るように、笑い飛ばせるように。それが、大学での二橋の大きなモチベーションとなっていった。
「『疑惑』とか言われていることを払拭させるために、大学ではずっと『絶対にプロに行ってやる!』って思いながらやってました」
大学1年時、大谷との“交流”
1年生の夏。二橋と大谷はたった一度だけ、“交流”を果たしている。
福島県のいわきグリーンスタジアムで開催されたオールスター第3戦。地元の大学で野球部員だった二橋は、補助員として外野スタンドでボールボーイをしていた。かつてのライバルは高卒1年目ながらオールスターに選出され、8回には自分の目の前でセンター前ヒットを披露した。
試合が終わり、選手たちが場内を一周していた時だ。二橋が叫ぶ。
大谷! 大谷!!
歓声が渦巻く外野席からでも、大谷はすぐに気づいてくれた。一緒に歩いていた選手たちに「あいつはですね」と、自分のことを説明してくれているようだった。
嬉しかった。ただ同時に、二橋は大谷との距離が広がっていることもわかった。
大学で活躍も…ついて回った「大谷を倒した男」
この邂逅から間もない1年生の秋から、二橋はレギュラーとなった。チームでの立ち位置を確立し、自信も増す。時折、『あれ、やっぱポール際じゃん』と、友人などから疑惑のホームランに言及されることもあったが、イジられキャラという従来の性格もあって受け流すこともできていた。
二橋が嫌悪したのは、そんな疑惑よりも自分の存在に被せるように、常に「大谷」という文言が強調されることだった。
そのことをまざまざと知らされたのが、4年生となった16年の全日本大学野球選手権だった。立命館大との初戦で敗れたが、4番として出場した二橋は、翌年のドラフトでDeNAからドラフト1位指名を受ける東克樹(当時3年生)からホームランを放った。
試合後。取材を受けた二橋には、敗れた悔しさとうんざりした気持ちが混在していた。