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「毎回言われるから頭にきちゃって…」北口榛花、世界陸上メダル獲得の直前にケンカ勃発?チェコ人コーチとのただならぬ緊張関係《歴史的快挙の舞台裏》

posted2022/07/24 17:01

 
「毎回言われるから頭にきちゃって…」北口榛花、世界陸上メダル獲得の直前にケンカ勃発?チェコ人コーチとのただならぬ緊張関係《歴史的快挙の舞台裏》<Number Web> photograph by Getty Images

世界陸上日本人女子史上初、フィールド競技でのメダルを獲得した北口榛花

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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Getty Images

 ヘイワードフィールドに西日が強く照りつける中、北口榛花がやりを放つ。

「あーーーっ」という声が響く。

 大きく弧を描いたやりは60mラインを大きく越える。

 63m27。

 スタジアム中に歓声が響いた。

 最後の6投目で、北口はビッグスローで豪州のバーバーにつぐ2位に上がった。

「(6投目は)ダメだったと思った。モニターで銅メダルのラインに届かなかったと。記録の表示を見て2番じゃんって。でも、その後、強い選手がいるから無理だと思った」

 実力者たちが後に控え、まだメダルは確定ではない。しかし北口が、最後に勝負の1投ができた満足感と安堵で涙を流しながらデイビッド・セケラックコーチの元へ駆け寄ると、コーチは北口をハグした。

 北口のすぐ後に米国のウィンガーが64m05を投げ、2位に上がり、北口は3位に。

 このまま3位をキープしたい。うれしさと不安の混ざった涙を流す北口にコーチは「もう他の選手の試技を見るな」と言い、励まし続ける。

 残り2人。5投目まで北口をリードしていた選手たちは力みが出たのかファールになり、北口は4位の劉詩穎に2cm、5位のリトルに5cm差で銅メダルをもぎ取ると、今度はうれし涙を流した。

 2015年に世界ユースで金メダルを取り、大きな期待をされたが、思うように練習ができなかったり、プレッシャーで記録が伸びないこともあった。

 2019年にチェコ人のセケラックコーチに師事し、そこから3年、二人三脚で歩んできた。2人で初めて挑んだドーハ世界陸上では決勝進出を目標にしていた。自己ベストを投げれば当然実現可能な目標だった。しかし予選で60m84に留まり、決勝進出ラインに6cm足りず、涙を流した。

 その悔しさを胸に臨んだ昨年の東京五輪では日本人女子として57年ぶりの決勝進出を果たすなど、着実に結果を出してきた。そして、共に挑む3度目の世界大会で、五輪、世界陸上で陸上フィールド種目では日本女子初のメダルという快挙を成し遂げた。

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