大舞台で結果を出した愛弟子にセケラックコーチは「いい銅メダルだ。がんばった」と少し涙を浮かべたが、すぐに切り替えて「64mはいけたと思うし、将来的にはハルカは67m投げられると信じている。今回は銅だけど、次は銀、金と上がっていけるようにがんばるよ」と次なる目標を話す。

銅メダルを獲得し、ケセラックコーチ（右）と喜びを分かち合う ©︎KYODO

　セケラックコーチはチェコのドマジュリツェという街でジュニア、シニア選手の指導に当たっている。北口もそこでチームメイトと共に切磋琢磨を続けてきた。

単身チェコに乗り込む

　やり投げは上半身と下半身をうまく連動させ、大きく体を使って投げるため、下半身の強化が必須になる。セケラックコーチは北口をとにかく走らせ、同時に体幹強化を行なった。

「私は投擲選手の中ではウェイト練習が弱い」

　ウェイト練習をすることで、柔軟さとしなやかさが失われるのではないか、と思ったこともあったが、コーチは北口の強みを保ちつつ、下半身をうまく使う投擲ができるように徹底的に鍛えた。

　その結果、安定して記録を出せるようになり、今大会でも予選、決勝で60mを超える投擲ができるようになった。

「（チームメイトは）休みでも私は毎日練習を入れられる」と北口がぼやくこともあったが、遠い日本からやり投げ王国のチェコに単身乗り込み、自分を頼ってきてくれた北口をしっかり鍛えトップ選手にしたい、というプレッシャー、そして強い思いがコーチにはあったようにも見える。

　最初はお互いにぎこちない部分があり、コーチが一方的に話す場面もあったが、時を経てその関係性は少しずつ変化した。疲れている時は休みたいと伝え、考え方が違う時には異論を唱えられるようになった。

「本来あるべきコーチと選手の関係になってきた」

　2人の関係性を北口はそう表現する。

　結果的に「口論や喧嘩が絶えない仲」になってきたが、側から見ると『喧嘩するほど仲がいい』ように見える。

　とはいえ言葉の壁もあり、お互いにダイレクトな表現をするせいか、些細なことでも頭に来ることがあるのだろう。

　今大会の決勝でも喧嘩が勃発していたという。

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