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「最後の夏、涙も出なかった」巨人・岡本和真26歳の甲子園、まさかの初戦敗退。「悔いがあるとすれば、負けたことではなく…」
posted2022/08/13 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
最後の夏、思わぬタイミングで喫した敗戦にも、頭のなかはクールだった。一種の安堵感すら過ぎった。岡本和真(奈良・智弁学園高校/現・巨人)に悔いがあったとすれば、ある一点に尽きる――。コロナに夏を奪われた3年生球児への思いを込めて語る。
Sports Graphic Number1008号(2020年7月30日発売)『甲子園一敗の輝き。』を特別に無料公開します。※肩書きなど全て当時のまま
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負けて泣いたことはない。
「一度もないですね。最後の夏もあっさり負けて、涙も出なかった」
振り返る言葉も乾いていた。
奈良・智弁学園高校出身の巨人・岡本和真内野手は3年生の2014年に2度、甲子園大会で敗れている。
1度目は春のセンバツ大会。1回戦の三重高校戦で1試合2本塁打を放って一躍、全国へとその名を轟かせたが、直後の2回戦で佐野日大高校にサヨナラ負けを喫した。
「だから涙も出てきませんでした」
しかもこの試合の岡本は冴えなかった。4回と6回のチャンスにいずれも三振に倒れ、延長10回には死球で出塁したものの、1死二塁から遊ゴロで飛び出して三塁でアウトになる走塁ミスもやらかしている。そしてその裏に投手として2死満塁からサヨナラ安打を浴びた。
「サヨナラヒットを打たれて、整列したときには負けてもうたなあ……みたいな感じでしたね。ただ、春ってすぐに夏があるから、そんなに感慨なんてないんです。もっとレベルアップして夏にもう一度、来よう。すぐに自分の頭はそんな風に切り替わった。だから涙も出てきませんでした」
そして迎えた最後の夏。
この年の智弁学園は新チーム結成から県下では無敵を誇る最強チームだった。子供の頃からの憧れだった地元奈良の雄・天理高校を決勝で退けて手にした甲子園切符。しかし、その戦いも1回戦で明徳義塾高校に4対10と大敗してあっさり終わった。