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「曙が若貴兄弟を吹っ飛ばし、ファンの夢を打ち砕いた」瞬間最高視聴率は驚異の66.7%…“最強のヒール”が輝いた伝説の名古屋場所
text by
荒井太郎Taro Arai
photograph byJIJI PRESS
posted2022/07/21 11:01
1993年、二子山部屋に出向き貴ノ花相手に激しい稽古をする曙。同期入門(花の六三組)の若貴兄弟にとって最大・最強のライバルだった
瞬間最高視聴率66.7%、巴戦の結末は…
抽選の結果、貴ノ花が控えに回り、巴戦最初の一番は曙対若ノ花。食いつかれれば不利とばかりに、横綱は強烈な突き放しで押し倒すと、続く貴ノ花戦も左上手を引きつけて一気に走って寄り倒し。
「一発目(本割)で決めたかったけど、悪い相撲で負けてしまった。気持ちを入れ替え、横綱のプライドを持って思い切っていった」
平均視聴率37.6%、瞬間最高視聴率66.7%と国民が注視する中、曙は兄弟もろとも土俵下まで吹っ飛ばし、ファンの夢を完膚なきまでに打ち砕く圧倒的な強さで4度目の優勝を果たしたのだった。
貴ノ花は夏場所で14勝の優勝、名古屋場所で13勝の優勝同点というハイレベルの成績を残しながら、最年少横綱は見送られ、若ノ花は直近3場所37勝という文句なしの成績で場所後、大関に推挙された。第一人者としての責任、横綱初優勝、ライバルへの意地、すべての思いを結実させた曙は、この場所から3連覇を達成。24歳のこの年が全盛期と言えたが、“ヒール”が強かったからこそ、“若貴”もまた輝きを増したのだった。
時代は下り、今年の名古屋場所も例年に比べれば、そこまでの酷暑ではなく連日、熱戦が繰り広げられている。夏場所に続き、混戦模様の優勝争いは、横綱照ノ富士が抜け出しそうな気配だが、初優勝を目指す逸ノ城も不気味な存在であり、終盤戦に突入してもまだまだ予断を許さない。
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