勝って宿舎に戻るたび、関係者を通じてイチローからのメッセージが届けられた。尾崎監督は言う。

「そのときイチローさんはアメリカにいて、時差もあるのに、試合を見ていてくださった。ぼくはそこに、指導者としてのイチローさんの愛を感じるんです。教えっぱなしで終わりではなく、その後まできちんと追ってくださる。お会いするまでは遠い存在でしたけど、野球を愛し、選手に愛情を持って接するという点においては同じハートを持ってるんだな、と」

　準決勝では大阪桐蔭に大敗を喫したものの、堂々のベスト4入り。健闘を見せた教え子たちへ、海の向こうからこんな言葉が贈られた。

「甲子園でみんなが躍動する姿に感銘を受けました。こんな気持ちにさせてくれて、感謝しています。ありがとう」

準決勝で大阪桐蔭に敗れたものの、初めてセンバツ4強入りを果たした國學院久我山ナイン　©︎Hideki Sugiyama

「こんな気持ち」がどんなものなのか、説明はない。だが尾崎監督には、「同じハート」を持つ者として、その感情の色合いがわかるような気がした。

　躍進の春を経て、夏はどこまで駆け上がれるか。久我山野球の行く末を、指導者イチローは最後まで見届けるはずだ。

（#2/千葉明徳編につづく）

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。