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井岡一翔「僕にしかできないことがある」真骨頂の“完封勝ち”で世界戦20勝に到達した名王者の「井上尚弥とも村田諒太とも違った輝き」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2022/07/14 17:04
7月13日、WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔はかつて敗れたドニー・ニエテスを圧倒し5度目の防衛に成功。日本人最多の世界戦20勝目をあげた
世界戦20勝の偉業「僕にしかできないことがある」
これで世界タイトルマッチは20勝目。世界タイトルマッチ出場22試合と並んで、国内世界チャンピオンの歴代1位記録をまたひとつ更新した。大舞台を踏んだ数こそが強さを生み出し、財産になっているというのが井岡の考えだ。
「世界戦を一番多くやらせてもらって、世界戦で学んだ部分はだれよりも多い。その分怖さも分かる」
2011年に初めて世界チャンピオンになってから11年。常に大舞台を踏み続けてきた井岡だからこそ持ち得た強みだ。だからこそ、目標とする他団体王者との統一戦がなかなか決まらなくても、心が大きくブレることはなかった。
「それは考え方の問題。(統一戦ができないことに不満を感じたら)そういう考えになるし、世界チャンピオンとして防衛を重ねるのは当然だと考えることもできる。具志堅(用高)さんだってそうだった。結果を残さなくちゃいけないし、世界戦が一番大事だし、やり続けることが大事だと思う」
井岡には「我が道をゆく」という言葉がよく似合う。ビッグマッチに恵まれなくとも不平を言わず、コツコツと勝ち続けるのも井岡のマイ・ウェイだ。それでも宿敵にリベンジをはたした今、「次こそは」の期待は高まっている。
最も有力なのはIBF王者との統一戦だろう。王者フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)と前王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)がダイレクトリマッチを行うと報じられており、この勝者との対戦を井岡は希望している。アンカハスとは昨年末、一度は統一戦が決まりながらコロナ禍で流れてしまった。IBF王者と年末に統一戦というのが、現時点で描く理想のシナリオである。
まだまだ成長を続ける井岡が放ついぶし銀の光は、井上尚弥とも村田諒太とも違った独特の輝きがある。「僕には僕にしかできないことがある。良くも悪くも自分にしかできないボクシングスタイルがある」。そう語るチャンピオンが近い将来、待望の統一戦を手にすることを願うばかりだ。
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