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那須川天心のボクシングの実力は「現時点で日本~東洋太平洋王者レベル」 敏腕トレーナーが語る成功の可能性と“わずかな不安要素”
posted2022/07/06 17:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
THE MATCH 2022/Susumu Nagao
格闘家の那須川天心が6月19日に東京ドームで開催された『THE MATCH 2022』でライバルの武尊に勝利してキックボクシングを卒業。いよいよボクシングに転向することで注目が集まっている。はたして那須川はボクシングで通用するのか? 何戦目で世界チャンピオンになれるのか? 階級は? キックボクシングで“天才格闘家”の名をほしいままにした23歳のボクシング転向後を占ってみた。
ボクシング転向で直面しうる「課題」とは
今回ご登場願ったのは、ボクシングのトレーナーにしてキックボクシングや総合格闘技の選手の指導も長く手がけてきたJB SPORTS BOXINGGYMの山田武士トレーナーだ。山田トレーナーには昨年4月にも、「キックで大活躍の那須川がなぜボクシングに転向するのか」というテーマで話を伺った。
今回のテーマは「はたして那須川はボクシングでも大成功を収めるのか」。山田トレーナーの答えは「イエス」だ。山田トレーナーは、現時点でも那須川のボクシングの実力は「日本王者や東洋太平洋王者レベルか、あるいはそれ以上」だとみている。
その理由は那須川という格闘家の才能、センスによるところが大きいのだが、以前、山田トレーナーに解説してもらった「キックとボクシングの違いが小さくなっている」という事情を簡単におさらいしておきたい。
キックボクシングのルールは年々変わり、従来のムエタイ型からよりボクシングに近いスタイルに変わってきた。こうした事情から那須川の世代のキックボクサーは日常的にボクシング練習に取り組んできた。山田トレーナー曰く、「いまのキックはキックボクシングではなく、ボクシングキック」であり、キックからボクシングに転向するハードルが以前に比べてはるかに低い――という話だった。
とはいえ、キックとボクシングはまったく同じ競技ではない。足を使うキックと手だけのボクシングでは戦う2人の距離が異なり、よく指摘されるようにラウンド数の違いもある。那須川にだって超えなければならないハードルは間違いなくあるはずだ。
那須川が今後、直面するであろう課題とは何なのだろうか。