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井岡一翔「僕にしかできないことがある」真骨頂の“完封勝ち”で世界戦20勝に到達した名王者の「井上尚弥とも村田諒太とも違った輝き」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2022/07/14 17:04

井岡一翔「僕にしかできないことがある」真骨頂の“完封勝ち”で世界戦20勝に到達した名王者の「井上尚弥とも村田諒太とも違った輝き」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

7月13日、WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔はかつて敗れたドニー・ニエテスを圧倒し5度目の防衛に成功。日本人最多の世界戦20勝目をあげた

圧倒しながらも「KOは難しい」と感じていた理由

 ニエテスの試合後のコメントが端的にして的確だった。

「井岡のジャブにいくつかカウンターを入れたところは良かったが、下がってしまったのは良くなかった。強い圧力をかけられなかった。本当はもっと距離を詰めたかったが、井岡が右に、左に動くのでそれができなかった……」

 互いに目がよく、ディフェンスがいいため派手なクリーンヒットはない。それでも試合をコントロールしているのは井岡だ。絶えず脚を動かし、ラウンドを追うごとに攻撃のバリエーションを増やして着実に勝利に近づいていった。

 中盤以降はボディブローを効かせ、8回にニエテスの右目の上を、10回には左目の上をパンチで切り裂いた。ニエテスの反撃は単発で力なく、チャンピオンのノックアウト勝利も見えてきたかに思えた。ところがリング上の井岡が「KOは難しい」と感じていたのは興味深い。

「微妙に距離を詰めたり、逃がしたり、一番いい角度で当てさせてくれないんですよ。ジャブもはたから見たらなんともないジャブに見えると思いますけど、ノーモーションやし、こちらの視界を隠されるというか、次に飛んでくるパンチが見えづらい。やっぱりうまいなあと。(ポイントでリードしていることは分かっていて)プロとして倒しきる展開に持っていきたかったけど、そこはニエテスのうまさが光りました」

 井岡だからこそニエテスの技巧を他の選手以上に感じたのだろう。劣勢の中、あきらめずに狙い続けるニエテスのカウンターに対処しつつ、最後までプレッシャーをかけてフィニッシュした。

 読み上げられたスコアは117-111、118-110、120-108。「完封勝ちはできたと思う」。井岡の誇らしげな言葉を耳にして、敗者に一切の言い訳を許さない勝ち方こそが、このチャンピオンに最もふさわしい勝利だと思えた。

【次ページ】 世界戦20勝の偉業「僕にしかできないことがある」

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