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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「中田英寿らとローマで優勝→無所属新人で市長当選」 インタビューしてたら“子育てトーク”…トンマージ48歳が選挙に勝てたワケ
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byShinichiro Kaneko/AFLO
posted2022/07/09 17:01
パルマ時代の中田英寿とデュエルするトンマージ。政治家転身した今の姿は?
“イタリア国内の自治体首長選挙に当選した元セリエA選手”といえば、09年の現役引退後にすぐさま首長になったMFカルロ・ネルボ(ボローニャ等)が最初の例だ。
ただし、ネルボが5年間治めていたのは人口1800人の小さな山村で、内政への影響や国際的知名度でいえば、ベローナとは雲泥の差がある。
W杯優勝した得点王が欧州議会選に出馬したけど……
イタリアでカルチャトーレ(=サッカー選手)の政界転向に先鞭をつけたのは、69年にバロンドールを受賞した球聖ジャンニ・リベラとされる。抜群の人気と爽やかなイメージを活かして、87年の国会下院選挙に中道政党から初出馬して初当選した。その後、96年の下院選挙にはユベントスやナポリで活躍したMFマッシモ・マウロが、故郷のカラブリア州選挙区に左派政党「オリーブの木」から出馬し当選、国政の舞台に続いた。
だが、どんな世界であれ、知名度だけで結果を出せるようなことは続かない。
82年スペインW杯で優勝したイタリア代表の面々は、今でも初老世代以上に抜群の浸透度だが、選挙に勇んで出馬した結果、散々な目に遭っている。
94年の上院選に中道右派政党から出馬したFWフランチェスコ・グラツィアーニ(当時41歳)がまず落選。2年後の下院選ではFWアレッサンドロ・アルトベッリ(当時40歳)が得票率で5.2%及ばず、これも落選。国内がダメならEUだと99年の欧州議会選挙には、故パオロ・ロッシ(当時42歳)が出馬するも1万1000票しか集められずこれまた敗戦。
00年代初頭にイタリア五輪代表やインテルの監督を歴任したMFマルコ・タルデッリ(当時49歳)も、04年欧州議会選であえなく撃沈した。投票日は6月だったが、タルデッリは3カ月前にエジプト代表監督に就任したばかりで、そもそも本気で政治活動をやる意志があったのか相当疑わしい(エジプト代表からも10月に解任された)。
8年前の欧州議会選では、控えGKだったジョバンニ・ガッリ(当時56歳)まであっさり敗れ、花の82年組は大型選挙5連敗を喫した。
元サッカー選手が政治の世界で何ができるのか。イタリアの有権者たちの目は決して甘くないのだ。
トンマージ新市長と保守勢力の衝突は不可避か
カルチョの国は意外とその辺りが冷笑的で、政治や経済はそれぞれの学問をきちんと修めた専門家に託すべき、という考えは根強い。餅は餅屋という考え方だ。
ただし、専門家に任せすぎると思想や実践が硬直化する。