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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「中田英寿らとローマで優勝→無所属新人で市長当選」 インタビューしてたら“子育てトーク”…トンマージ48歳が選挙に勝てたワケ
posted2022/07/09 17:01
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Shinichiro Kaneko/AFLO
“無所属新人”ダミアーノ・トンマージが、見事初当選を果たした。勝ったのは、イタリア北部の古都ベローナ市長選だ。同選挙は、イタリア国政にも影響を与える初夏の大型地方選挙の目玉として注目を集めていた。
つなぎ役のインサイドハーフとしてセリエAや代表チームで活躍したトンマージ(48歳)は、知名度を活かしながら中道左派連合の支持をとりつけて初出馬。6月26日の決選投票で54.4%の票を集め、右派の現職フェデリコ・スボアリナ(51歳)を破り、新首長となった。
対立勢力ベルルスコーニが負け惜しみ
「我々は街の歴史に新しい1ページを記した!」
世界遺産の旧市街地や『ロミオとジュリエット』の舞台として知られる古都ベローナは、国内政界における保守勢力の牙城だっただけに、15年ぶりの左派市長誕生は地方選全体と中央政界にも影響を及ぼした。
左派連合の勝利宣言に、右派の領袖シルビオ・ベルルスコーニ(85歳)が「今回の選挙に勝者はいない。破れたのは民主主義だ」と負け惜しみをこぼしたほどだ。
黄色いTシャツ姿で統一された支援者たちの輪に囲まれたトンマージ新市長は、対立相手への挑発や無意味な候補者名連呼に頼らず、地道な握手行脚の末に当選をつかんだ。伝統ある街に新風を呼びこむことが期待されている。
フィッカデンティらとともにプレーした
ベローナはトンマージにとって思い入れのある故郷だ。下部組織から育ててもらった地元クラブ、ベローナでセリエBにプロデビューしたのは93-94シーズンに遡る。96年には、DFマルコ・バローニ(現レッチェ監督)やMFマッシモ・フィッカデンティ(前名古屋グランパス監督)らとともにセリエA昇格を達成。その夏にローマへ移籍し、01年のスクデットを獲得した。
イタリア代表として02年日韓W杯にも出場。キャリア晩年に国外リーグや無名の下位カテゴリークラブを転々としながら、伊サッカー選手協会の会長を3期9年務めあげた。歴代のチームメイトたちから「誠実ひとすじの男」と慕われ、FIGC(伊サッカー連盟)役員も経験した。
故郷ベローナに帰り、周囲の声に推されながら地元のために働きたいと政界転身と市長選出馬を決意。簡潔にして清貧な公約と、SNSに頼らない昔ながらの選挙活動に下馬評は低かったが、現職と前職の候補2人がいがみ合う右派の分裂に乗じて、歴史的勝利を収めた。