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「日本の方が疲れとったよ」フランスの洗礼を受けたラグビー日本代表…“第2テスト”はどう戦う? ジェイミーHCが強調する2つのキーワード
posted2022/07/08 06:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Atsushi Kondo
2015年、2019年のW杯で、なぜわれわれ日本人が大いに興奮できたのか?
それは、エディー・ジョーンズ、そしてジェイミー・ジョセフ&トニー・ブラウンという指導陣が稀代の“策士”だったからだ。
2015年W杯、南アフリカ戦。
それまで、エディーのジャパンは「パス10:キック1」の黄金律でチームスタイルを確立してきた。当然、南アはそのつもりでいただろう。
ところが——。
ジャパンは攻めなかった。ハイボールを淡々と蹴り続け、相手を戸惑わせた。エディーは南アフリカをこう見ていた。
「南アフリカの社会的な歴史が、ディフェンシブなスタイルを確立したのです。彼らは相手に攻めさせ、タックルし、そこで痛めつけ、カウンターアタックに転じる」
エディーは巨人たちに攻めさせ、ここぞという時に牙を剥いて歴史的な金星をつかんだ。
続くジェイミー・ジャパンの真骨頂は、2019年W杯2戦目のアイルランド戦だった。
2016年から始まったキャンペーンの特徴は、キックの多用にあった。
しかし、静岡のエコパスタジアムでのあの夜、日本はアイルランドを相手に、突如としてボールを回し始めた。パス、パス、パス。とにかくボールを保持して攻め続ける。それまでの「キックの過去」を裏切るように——。
いつの間にか、日本代表はキックとパスの「二刀流」のチームとなり、最高傑作はグループステージ最終戦、福岡堅樹が2トライを挙げたスコットランド戦だった。
過去2度のW杯キャンペーンを振り返ると、首脳陣は肝心の試合で相手を欺くことが出来た。日本には稀代の軍師、諸葛亮孔明のような知恵者がいたからこそ、歓喜が訪れたのだ。
「日本のアタックには少しばかり驚いた」
先週のフランス戦でも、首脳陣は考えに考えたはずだ。
先々週のウルグアイ戦までは、キックを適度に織り交ぜてバランスの良い戦い方を見せていたので、おそらくフランスはそれに対する準備をしていただろう。
しかし、それは伏線だった。
フランスの14番のペノー、15番のジャミネのふたりはカウンターアタックの創造性が高く、ボールを渡しては危険だ。
日本側は、そのリスクを減らそうと考えたはず。加えて、豊田スタジアムの高温多湿の気象環境も考慮して、日本はポゼッションを重視し、相手を休ませないように攻め続けた。
第1戦、フランスの首脳陣は「日本のアタックに少しばかり驚いた」とフランスメディアに明かしていたようだ。
その点では、日本は裏をかくことに成功していた。軍師の狙いは外れてはいなかった。
ところが、それが決定打にはならなかった。