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「日本の方が疲れとったよ」フランスの洗礼を受けたラグビー日本代表…“第2テスト”はどう戦う? ジェイミーHCが強調する2つのキーワード
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAtsushi Kondo
posted2022/07/08 06:00
フランス第2戦でも10番を託された李承信(21歳)。第1戦ではキレのあるアタックを披露した
フランスのファビアン・ガルティエ・ヘッドコーチは(いつもそうだが、スクエアな黒縁めがねには、強烈な個性の主張が見て取れる)、こう語った。
「前半をエガリテで終えられてよかった」
エガリテとは、同点のこと。テニスのデュースも、フランス語ではエガリテ。想定外の攻撃を受けたが、アウェイで均衡を保てたことで、世界ランキング2位のフランスは後半に入って牙を剥いた。
激しいタックルでボールコントロールを奪い、セットプレーからのアタックでジャパンの弱点を攻めてきた。
時間が経つにつれ、日本の選手に消耗が目立ち始める。ピッチで撮影をしている写真家の眼には、それがありありと分かったようだ。
「フランスより、日本の方が疲れとったよ」
消耗戦を仕掛けたつもりが、逆に疲労を蓄積していたのは日本だった。
フランスは、なんと奥深いチームになったことか! 昨年秋にはオールブラックスを叩きのめし、シックスネーションズでは全勝優勝。そして日本との初戦、前半こそ日本のスタイルに付き合ったが、後半に入ってみれば、横綱相撲そのものだった。
この懐の深さ、来年のW杯、地元での優勝も十分にあり得るだろう(ただし、チーム内が揉めるのがフランスの特徴なので、そう簡単には言い切れないけれど)。
日本としてみれば、プランは間違っていなかったが、それに見合うフィットネスと戦術の練度が足りなかったことになる。コロナ禍でチーム作りが遅れた以上、熟成するのは来年まで待たなければならないだろう。
日本は“第2テスト”をどう戦うか?
さて、第1テストを受けて、国立競技場での第2テストを日本はどう戦うのだろうか。
先発メンバーの発表に合わせた記者会見で、ジェイミーが強調したのは、「バランス」と「コントロール」だった。この言葉は、記者によって解釈が違うと思う。
この原稿を書いている段階での私の解釈は、パスに偏った戦術に、適切な割合でキックを織り交ぜ、ゲームをコントロールすることだと考えている。それによって「モメンタム」、試合の流れを引き寄せる狙いのようだ。
一気に、保守的なキック多用もあり得るかと考えていたが、基本的にはパス中心のアタックの路線を踏襲すると捉えていいだろう。大切なのは、流れを失わないように適切なプレー選択をし、精度を高めるということだ。
その塩梅を担うのは、21歳の10番、李承信(リ・スンシン)だ。ジェイミーは、先週の第1テストで初めて先発出場した李のパフォーマンスを前向きに評価した。
「いい試合をしてくれたと思う。もう一度機会を与えることで経験を積み、早くトップレベルの選手に到達して欲しい」
中でも、「速さ」について大いに期待したいという。