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那須川天心のボクシングの実力は「現時点で日本~東洋太平洋王者レベル」 敏腕トレーナーが語る成功の可能性と“わずかな不安要素” 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byTHE MATCH 2022/Susumu Nagao

posted2022/07/06 17:02

那須川天心のボクシングの実力は「現時点で日本~東洋太平洋王者レベル」 敏腕トレーナーが語る成功の可能性と“わずかな不安要素”<Number Web> photograph by THE MATCH 2022/Susumu Nagao

『THE MATCH 2022』でもボクシングテクニックで優位に立っていた那須川天心。ボクシング転向後の可能性を山田武士トレーナーに聞いた

「あえて挙げるとすれば接近戦です。ボクシングでは互いにおでこをつけてパンチを打ち合うようなシーンがありますよね。これがキックだとほぼない。ヒザが飛んでくるからです。天心もそういう距離で戦ったことはないと思うので、そこが課題になる可能性はある。もう練習はしていると思いますけど」

“体の強さ”という大きなアドバンテージ

 一方で、山田トレーナーはこうも分析する。

「ただ、天心とやる選手が接近戦に持ち込めるかというとかなり難しい。天心はスピードがあってパンチもあって、カウンターも打てる。日本刀でスパッと切り落とすようなキレのあるパンチが大きな武器です。体も強い。その天心を接近戦に引きずり込めるボクサーがいるのか。なかなか思い浮ばないんですよ」

 那須川の特長の中でも、“体の強さ”は他のボクサーにはない大きなアドバンテージになるという。

「キックのトップ選手はボクサーに比べると圧倒的に体が強い。ブロックひとつとっても蹴りを受けていますからね。それに彼らの練習量って半端ないんですよ。1日3部練習は当たり前。そう考えるとラウンド数も問題にならない。ペース配分だけですから。むしろ3ラウンドで出し切る術を知っていることはアドバンテージになり得る。ボクサーが10ラウンド、12ラウンドのスローペースでいったら、あっという間にやられる危険性のほうが高い」

 長くボクサーを指導し続けた山田トレーナーの言葉だけに説得力はある。とはいえ不安がゼロというのもあり得ない話だろう。そう質問をぶつけて絞り出してきたのは、ボクシングのスパーリングだった。

「キックのスパーリングって、ボクシングでいうところのマスボクシングなんです。力一杯殴ったり蹴ったりしないんですよ。ところがボクシングのスパーリングはバチバチにやりますよね。それを週2、3回とかやる。試合じゃなくてスパーリングで壊れる選手も少なくない。そのあたりの違いは、心配材料ではあります。でもまあ、そんなことも小さな話のような気がするんですよね。あれだけ格闘技に人生、命をかけている選手は見たことがありませんから」

【次ページ】 村田諒太のように地域王者クラスとのデビュー戦も?

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