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ノーベル平和賞の叔父は「性暴力に苦しむ5万人の女性を救った“闘う医師”」J2徳島の助っ人FWの意外な過去〈幼少期はコンゴ戦争を経験〉
posted2022/07/04 06:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
J.LEAGUE
「実は来年の2月か3月に、自伝を出すことになっていて、7月中にはタイトルを決めないといけません。なにかいいアイデアはありませんか?」
こう言って、パソコンの画面上でやわらかな笑みを浮かべるのはムシャガ・バケンガ。徳島ヴォルティスに移籍して2シーズン目、20代最後のシーズンを戦うストライカーはいま、オフの時間を自伝の制作に充てている。
シティ、バイエルン…ビッグクラブからも勧誘
ノルウェー生まれのバケンガはジュニア時代から将来を嘱望され、チェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナル、バイエルン・ミュンヘンといったヨーロッパのビッグクラブから勧誘を受けた。
「13歳か14歳のころ、一度はチェルシーに行こうと決心しました。でも、なによりも愛する家族と離れ離れになるのがつらくて、ノルウェー最大のクラブ、ローゼンボリに進むことにしたのです」
その後はケガと戦いながら、ベルギー、ドイツ、デンマークのクラブを渡り歩き、昨季8月、徳島に新天地を求めた。
「浮いたり沈んだりと厳しいキャリアを過ごしたヨーロッパと比べると、日本での日々はとても充実しています。この国の文化や人々の様子が私には興味深く、とりわけ人々の交流の仕方には深い敬意を抱いています。そうした部分がノルウェーに帰ったときに自然に出てしまって、怪訝な顔をされることもあるんですよ」
もっともピッチ上での出来事や日本での暮らしは、自伝の一部に過ぎない。
物語の核となるのはバケンガのもうひとつの祖国、アフリカのコンゴ民主共和国のことだ。