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佐々木朗希が「剛」なら山本由伸は「柔」 日本のエースたる“圧倒的クオリティ”を示す超安定した記録の数々〈今季4人目ノーノー〉

posted2022/06/21 11:01

 
佐々木朗希が「剛」なら山本由伸は「柔」 日本のエースたる“圧倒的クオリティ”を示す超安定した記録の数々〈今季4人目ノーノー〉<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

佐々木朗希と山本由伸。2022年にノーヒッターとなった2人の投げ合いを熱望する野球ファンは多いはずだ

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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Hideki Sugiyama

 わずか4年前、山本由伸は背番号「43」を付けた19歳の細身のセットアッパーだった。小気味よい投球は少し前の佐藤達也をほうふつとさせた。翌2019年、20歳で先発に転向し、2020年には背番号「18」を背負う。そしてあれよあれよという間にリーグ、さらに日本球界を代表するエースになった。

先発転向後の76試合で「HQS」は53回の安定感

 山本由伸が、6月18日の西武戦で記録したノーヒットノーランは今季4度目、史上86人目、97回目。もはや希少価値はなくなりつつあるとはいえ、この投手の大記録は特筆すべき大記録である。

 2019年に先発に転向して、山本由伸はいきなりトップクラスの成績を残すようになる。特にQS(先発で6回以上投げて自責点3以下、先発の最低限の責任)、HQS(7回以上投げて自責点2以下)の数字は群を抜いていた。QS、HQSの%は登板数に占める割合。「球」は与四球、カッコ内の(●位)はリーグでの順位を示す。22年は6月20日時点のもの。

2019年/20登8勝6敗143回36球127振(5位)率1.95(1位)
16QS(80.0%、1位)11HQS(55.0%、1位)
2020年/18登8勝4敗126.2回37球149振(1位T)率2.20(2位)
14QS(77.8%、1位T)12HQS(66.7%、1位)
2021年/26登18勝5敗193.2回40球206振(1位)率1.39(1位)
23QS(88.5%、1位)20HQS(76.9%、1位)
2022年/12登7勝3敗87.1回21球86振(2位)率1.55(1位)
10QS(83.3%、1位T)10HQS(83.3%、1位)

 QS、HQSは先発投手の安定感を示す数字。QSは防御率でいえば4.50以下となるのでNPBではそれほど評価されていない。文字通り「最低限の責任」だが、HQSは防御率では2.57、先発投手の責任を果たしたと言える。山本はこの2つの数字が先発転向1年目からずっとリーグトップ。リーグで最も安定感のある投手なのは間違いない。

 この4年間で76試合に先発し、41勝18敗、2けた勝利は昨年の1回だけながら、QSは63、HQSは53と勝利数をはるかに上回っている。2019年、2020年とオリックスはリーグ最下位。打線は弱く、好投しても報われない試合が多かったのが要因である。

 そんな中で山本は勝敗を抜きにして文字通り「クオリティの高い」投球を積み重ねたうえで、ノーヒットノーランを達成したのだ。必然的な結果と言うこともできよう。

佐々木朗希と山本由伸、どちらが凄いか議論

 今年4月10日に完全試合を達成したロッテの佐々木朗希と、山本由伸の「どちらが凄いか」は近頃、よく議論になるところだ。

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