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山川穂高の本音「早くメジャーに行って欲しいです」あの日、オリックス山本由伸(23歳)は西武打者“28人”にどんなボールを投げたのか?
posted2022/06/21 17:03
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
JIJI PRESS
佐々木朗希が表紙を飾った「Number」1052号にて、私は山本由伸のインタビューを担当した。
対話の結びに山本が話したのが、完全試合についてだった。
「いつか達成してみたいです。いつかは」
6月18日、山本は西武相手にノーヒッターを達成した。四球ひとつだけの「準完全試合」である。
インタビューのとき、ピッチングについて語る彼の発想で印象的だったのは、次の言葉だった。
「自分は相手打線のデータを見て投球を組み立てるというよりも、その日の自分の調子のいい球で組み立てていくという感じです。その日のコンディションを見極めながら」
聞けば、試合前のブルペンでその日の調子、出来栄えはだいたい予想がつくという。そしてマウンドに上がり、指先にしっかりと力を伝えられる球種を中心に投球を組み立てていく。
序盤はストレートだった
ここでは、西武戦での「結果球」(野村克也用語で、対戦で決着がついた球のことを指す)を見ていこう。
最初の一回り目、山本はストレートを中心に打者を打ち取っていたことが分かる。
1回裏
川越 ストレート 三振
源田 ストレート 二ゴロ
オグレディ フォーク 三振
2回裏
山川 ストレート 右フライ
栗山 ストレート 中フライ
外崎 ストレート 三ゴロ
3回裏
平沼 カーブ 遊ゴロ
愛斗 カーブ 三直
古賀 ストレート 三振
おそらくブルペンでのストレートの感触がかなり良かったに違いない。特に2回、山川(この右フライはいい当たりだった)、栗山、外崎に対してはストレートでグイグイ押し、ねじ伏せている感じだ。
3回は一転、下位に回るタイミングでカーブを多投しており、出力を抑え、スタミナを温存していることがうかがえる。山本らしい先発投手としてのマネージメントだ。
“ひとつだけの四球”…前後に何があった?
そして2回り目に入るが、ここからはカッターやフォークを交えるようになる。